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『スーパーロボット大戦』制作陣に聞く30年間に渡るシリーズの歩みとこだわり

古今東西のロボットが作品の枠を超えて共闘する『スーパーロボット大戦』。30周年を迎えた本シリーズのこれまでの歩みと作品に込められたこだわりについて、シリーズプロデューサーの寺田貴信さん、最新作『スーパーロボット大戦30』、『スーパーロボット大戦DD』の両プロデューサーにインタビューを行いました。

2021年4月20日に30周年を迎えた『スーパーロボット大戦』(以下、『スパロボ』)シリーズ。本シリーズは、古今東西のロボットが一堂に会し、作品の枠を超えた共演をくり広げるシミュレーションRPGです。2021年10月28日にはシリーズ最新作の『スーパーロボット大戦30』(以下、『スパロボ30』)がリリースされ、スマートフォンアプリでは『スーパーロボット大戦DD』(以下、『スパロボDD』)がサービス3年目に突入しています。

スーパーロボット大戦30

今回は、シリーズプロデューサーの寺田貴信さん、『スパロボ30』プロデューサーの最上頌平さん、『スパロボDD』プロデューサーのオオチヒロアキさんにインタビューを行いました。3名から『スパロボ』シリーズの歩みや外部の作品を扱ううえで大事にしているポイントなどについて伺います。

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寺田 貴信

『スパロボ』シリーズプロデューサー。1995年にリリースされた『第2次スーパーロボット大戦G』でプロデューサーを務め、以降プロデュースや監修などのかたちで『スパロボ』シリーズに携わる。

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最上 頌平

バンダイナムコエンターテインメント所属

最新作の『スパロボ30』プロデューサー。2018年リリースの『スーパーロボット大戦X』や2019年リリースの『スーパーロボット大戦T』など、近年の『スパロボ』シリーズでプロデューサーを務める。

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オオチヒロアキ

バンダイナムコエンターテインメント所属

『スーパーロボット大戦X-Ω』のプロデュースを手掛けたのち、2021年4月より前任のレッドから交代するかたちで『スパロボDD』のプロデューサーを務める。

制作陣それぞれの『スパロボ』との思い出

――これまで『スパロボ』シリーズに関わってきたなかで、印象的だったのはどのようなことですか?

オオチ:『スパロボ』に着任した当初は、すべてのアニメ作品に対する勉強量の多さが印象的でした。膨大な知識をどう吸収すればいいんだろうと悩んだ時期もありましたが、開発を通じて250本近い作品を視聴していくなかで、だんだんと見方が変わってきました。

例えば、こういう作品が生み出されたのはこんな時代背景があるから、バブルだったからこんな表現が生まれた、みたいな自分なりの奥行みたいなものが見いだせるようになって、それからは勉強そのものが楽しくなっていきました!

ただ、自分が『スパロボ』に携わるようになってからは10年ちょっとなので、シリーズ全体の歴史からすると3分の1なんですよね。この10年で身に付けた知識量を考えると、改めて30年というのはすごいなと思います。

『スパロボDD』のプロデューサーオオチさん
『スパロボDD』のプロデューサーオオチさん

――最上さんはどのようなことが印象的でしたか?

最上:これだけ長いシリーズをSteam版にもっていったのは印象的でした。もともとPCでのプレイと相性はいいと思っていたんです。

『スパロボV』『スパロボX』をSteam版に移植したときはパッケージソフトと同様に日本とアジアのみの販売だったんですが、欧米の人がSteamでの販売なら自分たちも買えるのではないか、と期待してくれていたんですがそれを裏切る形になってしまって。

今回の『スパロボ30』では関係各所のご理解のもと、欧米での配信が実現できました。こちらから欧米での販売を正式にお知らせする前にたくさんの方が気が付き、予約して応援しよう、といった書き込みがあったことは特に印象深いですね。

最新作の『スパロボ30』プロデューサー 最上さん
最新作の『スパロボ30』プロデューサー 最上さん

――寺田さんはいかがでしょうか?

寺田:初期から現在にいたるまで、新しいハードに対して、ゲーム性や演出面などベストな形で対応し続ける事が時に大変に感じる事もありますが、初期で一番大変だったのは声優さんの声を『スパロボ』に入れた時ですね。

単純に人数も多いうえに主役級の声優さんが集まるので、当時、スケジュール調整にとても時間がかかりました。一時期は会社に行くよりもスタジオに足を運ぶ頻度のほうが高かったこともあります。

ただ、“声優さんが豪華”というのを『スパロボ』のアピールポイントにするつもりはありません。原作のキャラクターを演じていらっしゃる声優さんを集めれば豪華になるのは当然のことで、それは『スパロボ』の功績ではありませんから。

『スパロボ』シリーズプロデューサー 寺田さん
『スパロボ』シリーズプロデューサー 寺田さん

クロスオーバーのポイントは、作品間の「共通項」を探すこと

――初期の『スパロボ』シリーズはどちらかというと懐かしい作品が中心になっていましたが、そこから参戦作品の幅を広げることになったきっかけは何だったのでしょうか?

寺田:もともと『スパロボ』は『第4次』で終わる予定で、当時は『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』など、70年代に登場した懐かしいロボットを中心にするというコンセプトだったんです。

会社からシリーズを続けるように言われた時に、同じコンセプトではユーザー層が広がらないと思って、放送からまだ間もない『機動武闘伝Gガンダム』や『機動戦士Vガンダム』などを出すようにしました。最初のころは「新しい作品より懐かしいものを出してほしい」といった反応も多かったんですよ。

『スパロボ』シリーズプロデューサー 寺田さん

――そこでの寺田さんの決断があったからこそ、30周年を迎える長寿シリーズとなったわけですね。

寺田:ただ一方で、シリーズが続けば続くほど作品やユーザーの世代が開いていくので、そのズレをどう合わせていくか、というのは常に考えています。さすがにすべてのロボットアニメを『スパロボ』に出すのは困難なので。

最上:全世代の作品を出そうとすると70作品くらいかそれ以上になってしまいますけど、そうなると主人公クラスだけでもキャラクターの数がすごいことになって、話の収集がつかなくなってしまうんですよね。

ストーリーとして成立させられるボリュームとしては20~25作品くらいがちょうどいいので、そのなかでバランスを考えています。

――そもそもの話になりますが、これだけ多彩な作品が登場してクロスオーバーを展開するというのがすごいですよね。

寺田:源流にあるのは、1990年代にバンプレストが作っていた『コンパチヒーロー』シリーズ(※1)ですね。ウルトラマンや仮面ライダー、ガンダムという別々の作品がゲームで共演するというコンセプトを認めていただく代わりに、キャラクターをスーパーデフォルメ(SD)(※2)で表現することになりました。これは本家本元とは違う、あくまでIFの作品であるということを示すためでもあります。そして、『スパロボ』はその流れに乗って出てきたんです。

※1 『コンパチヒーロー』シリーズ:『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、『機動戦士ガンダム』などのキャラクターが登場するゲームシリーズ。

※2 スーパーデフォルメ(SD):頭身の低いキャラクターを制作するデフォルメ技術の手法

スパロボのフィギュア

――複数の作品がクロスオーバーするシナリオを考えるうえで大事にしているのは、どのようなことでしょうか?

寺田:それぞれの作品の魅力を引き出す事を前提に、基本的には作品間に共通する接点を探すことがポイントです。

例えば、同じような事情や悩みを抱えているキャラクター同士で会話をさせるとか、敵側のキャラクターでも似た行動目的があれば共闘させるとか。それでもユーザーの皆さまが違和感をもってしまう組み合わせはあるので、注意が必要です。

複数の原作の最大公約数をつかみ取り、そのなかで接点を上手く合わせていくのがクロスオーバーの基本です。ストーリーを工夫して、あえて接点がないもの同士を絡ませることもありますが、難しいですね。とはいえ、クロスオーバーはユーザーの皆さまが期待されるものと、「そういう組み合わせがあったか」と驚きつつ納得していただけるようなものを用意していきたいと思っています。

『スパロボ』から生まれたオリジナルジェネレーション

――多彩な作品のクロスオーバーが展開する一方で、『スパロボ』オリジナルのキャラクターや機体も多く登場していますね。

寺田:オリジナルは『第2次』に登場したサイバスターとグランゾンが最初ですね。あえて彼らのバックボーンのストーリーを詳しく説明しなかったので、「こんなロボットアニメを放送してたっけ?」と勘違いされたこともありました。

その後の「第3次スーパーロボット大戦」や「スーパーロボット大戦EX」でサイバスター関連のストーリーを徐々に出していき、ユーザーの皆さまに興味をもってもらったところで、バックボーンを明かすオリジナルの作品を出そうと考えていたんです。

『第2次』から登場したサイバスター。
『第2次』から登場したサイバスター。

――『スパロボ』を軸にしたオリジナルのロボット作品を生み出すことは、早い段階から計画されていたということですね。

寺田:そうです。『第4次』で終了する予定だった『スパロボ』がその後も続いたことで、時期こそ少し遅れてしまいましたが、そのあと実際にサイバスターを主軸にした作品として『スーパーロボット大戦外伝 魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL』をリリースしています。

2002年に発売された『スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION』も同様に、企画自体は早い段階から考えていました。サイバスターだけでなく、他の『スパロボ』に出ていたオリジナルロボットやキャラクターたちを出し、展開を広げたんです。海外にも『スーパーロボット大戦OG』シリーズのファンの方がいらっしゃいますし、プラモデルやフィギュアなどのグッズ展開もできているのは大変ありがたいことだと思っています。

サイバスターのプラモデル

知らない作品の魅力を伝え、原作への入り口となるのが『スパロボ』の役割

――オオチさんと最上さんは開発を行っているプラットフォームが違いますが、皆さんでミーティングなどはよくされるのでしょうか?

オオチ:わりと頻繁に行っていますね。『スパロボDD』と『スパロボ30』のように商品としては別々ですが、『スパロボ』シリーズとして重視することは変わらないんです。

例えば、スマートフォンアプリで『マジンガーZ』を求めているユーザーと家庭用ゲームで『マジンガーZ』を求めてくださるユーザーは、基本的に同じなんですよね。その方々に届けるべきものも当然同じになってくるので、個々人の方針で、というよりは『スパロボ』というIP(※3)として何を大事にするかを関係者一丸となって考えて展開しています。

※3 IP:知的財産のこと。ここではシリーズ作品全体を指す。

『スパロボDD』のプロデューサーオオチさん

――皆さんのなかで共通する部分も多いかと思いますが、『スパロボ』シリーズで大事にされているポイントを教えてください。

最上:まずは、ユーザーの皆さまが最初に目にするPVなどの映像部分で、かっこよく感じていただけるように演出面にこだわることですね。

『スパロボ』では全高数メートルの機体から数百メートルの機体まで登場するので、そういったサイズによる違和感をなくすためにSD表現を使っているところもあって、そこが原作と『スパロボ』の決定的な違いでもあるんです。

SDでサイズ感を調整しつつかっこいいと思える動きを見せて、実際の作品ではどうなっているんだろう、と原作に興味をもってもらえるようにするのが『スパロボ』の仕事かな、と思います。

最新作の『スパロボ30』プロデューサー 最上さん
 

オオチ:僕が大事にしていることは、参戦作品それぞれの魅力を深く考え、映像表現やシナリオでの活躍にどうやって反映するか、そして『スパロボ』を通してより多くの人にその作品を知ってもらい、興味をもってもらえるかです。

参戦しているアニメーション作品を見たことがない人にも届けること、ロボット作品を広める意図をもって『スパロボ』を開発していることを積極的に発信していくことが大事だと考えています。

『スパロボ』で見たことのない作品をかっこいいと感じてもらって、原作を見てみようと思ってもらわないと、このシリーズを作っている意味もないかなと思います。

『スパロボDD』のプロデューサーオオチさん

寺田:『スパロボ』に参戦する作品すべてをご存知の方はともかく、そうでない方はゲームで知らないロボットアニメに触れていただくことなります。なので、『スパロボ』にはロボットアニメのカタログ的な意味合いもあると思っています。

しかし、『スパロボ』は原作の一部をゲーム化しているだけに過ぎません。名だたるクリエイターの方々が作り上げたアニメの戦闘描写を完璧に再現することはむずかしいですし、キャラクターのドラマ部分も原作どおりというわけにはいきません。

原作とは異なるSDの表現で、原作の味や魅力を感じていただけるようにするのが肝要だと思っています。それでゲームで触れられていない部分にも興味をもってもらって、原作の映像を見たり、関連商品に触れていただけるとありがたいです。

最新作の『スパロボ30』では、時代にあわせた遊びやすさも取り入れた

――最新作の『スパロボ30』では、“タクティカル・エリア・セレクト”(※4)が導入され、従来とはプレイスタイルが大きく変わっていますが、こちらはどういった経緯で導入されたのでしょうか?

※4 タクティカル・エリア・セレクト:従来のようにシナリオに沿ってミッション(戦闘)が発生するのではなく、挑戦するミッションをプレイヤーが自由に選択し、キーミッションをクリアするとシナリオが進行するというシステム。

寺田:最近はスマートフォンでゲームを遊ぶ人も増えて、ゲームに費やせる時間も限られているだろう、というのがひとつのポイントでした。短時間で遊びたい人もじっくりと腰を据えてプレイしたい人も、どちらも満足できるようなものにしたい、ということを最上さんと話し合っていたんです。

そこで、キーとなるミッションをどんどん進めれば早くクリアすることもでき、それ以外も攻略していけば時間をかけて遊ぶこともできるタクティカル・エリア・セレクトを提案したところ、最上さんもほぼ即答で「いいですね」、と。

『スパロボ』シリーズプロデューサー 寺田さん

最上:タクティカル・エリア・セレクトは、これまで課題として考えていたことを反映したシステムでもあるんです。『スパロボ』をやり込んでくれるユーザーが最終的に何をするかというと、いわゆる「縛りプレイ」なんですよね。

長く楽しんでいただけること自体はとてもうれしいのですが、最終的にやることがなくなるから「縛りプレイ」をするわけじゃないですか。ゲームのコンテンツを提供する側としては、それはあまりよくないんじゃないか、と思ったことがあるんです。

――「縛りプレイ」をしなくても、もっと長く遊べる工夫を考えようと。

最上:そうですね。前作の『スーパーロボット大戦T』(以下、『スパロボT』)でもそういったやり込みをする人に向けて、より難しいモードの追加と過去作のラスボスと連戦するような超高難度の追加コンテンツを配信しました。

『スパロボ30』は、短く遊ぼうと思えばすぐ時間をかけずに遊べますけど、長く遊ぼうと思えばこれまでの『スパロボ』よりも時間をかけてラスボスにたどり着くようになっています。プレイヤーのニーズに合わせて自由に楽しめるかたちにできたので、そのあたりにぜひ注目してほしいです。

30周年を機に再び、あるいは初めて、『スパロボ』に触れてほしい

――最後に、『スパロボ』ファンに向けたメッセージをお願いします。

オオチ:最初の『スパロボ』が出てから30年、当時小学生だった子どもも40歳前後になる、それだけの時間が流れて、今でも現役の方もいれば、ライフスタイルの変化でプレイを止めてしまった人もいます。

この30周年というタイミングを機に、かつて『スパロボ』に熱中していた人も、興味はあったけど触れてこなかった人も、入り口は『スパロボ30』でも『スパロボDD』でも嬉しいので、ぜひ手に取ってもらえればと思います。

最上:前作から2年半ぶりの新作ということで、先ほどお話ししたように変更を加えた部分もあれば、これまでの魅力を継承している部分もあるので、ぜひとも多くの方に『スパロボ30』を遊んでいただければと思います。詳細はまだ明かせませんが、30周年記念作品ということでいろいろな仕掛けも用意しています。

あと、前述のとおり今回はSteam版が初めて欧米でも配信されます。シリーズ30周年を迎え、さらに勢いを増して世界にも広がっていく『スパロボ』を、今後も引き続きよろしくお願いします。

寺田:『スパロボ』とともに30年近くロボットコンテンツの片隅を走り続けてきましたが、ロボットアニメやそれに関連するものは、日本の大きな文化の1つだと思います。

なので、これからも『スパロボ』という作品を通してロボットコンテンツを盛り上げていくのが、私の役目だと思っています。もっとロボットを好きになってくれる人を増やしたいですし、かつてロボットを好きだった人たちも帰ってきていだだけるような場を作りたいと考えていますので、今後もよろしくお願いします。

スパロボ30

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村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのゲーム関連記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。