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『テイルズ オブ』シリーズ制作陣が手がける新作『SCARLET NEXUS』 ゲーム×アニメ制作秘話【後編】

2021年6月にリリースされた『SCARLET NEXUS』。『テイルズ オブ』シリーズのプロデューサーが手がける本作はゲームとアニメがほぼ同時に展開され、話題を呼んでいます。アソビモットでは3名のプロデューサーにインタビューを行い、グループ内での協力体制の中で行われた制作の裏話や、作品の魅力・こだわりについて、前後編に渡ってお届けします。

ゲームとアニメの制作の裏話を中心に伺った前編に引き続き、後編では、過去に『テイルズ オブ』シリーズや『CODE VEIN』に携わったプロデューサーが語る本作ならではのこだわりや、ワールドワイドな作品を意識して作られたキャラクターデザインや舞台設定など、作品のさらなる魅力について探ります。

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飯塚 啓太

バンダイナムコエンターテインメント所属 『SCARLET NEXUS』プロデューサー。スマートフォンアプリの開発、運営に携わったのち、家庭用ゲームの開発やプロデュースを手掛けた。2019年に発売された『CODE VEIN』でプロデューサーを務める。

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穴吹 健児

バンダイナムコスタジオ所属 『SCARLET NEXUS』ディレクター。『テイルズ オブ』シリーズに10年以上携わり、『テイルズ オブ エクシリア2』などでディレクターを務める。

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塚本 樹佳

サンライズ所属 テレビアニメ『SCARLET NEXUS』プロデューサー。テレビアニメ『銀魂』シリーズでは制作進行、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』シリーズでは制作デスクを務める。

『テイルズ オブ』シリーズで得られた経験の活用と、過去の作品との差別化

――『スカーレットネクサス』に対し、飯塚さんと穴吹さんが過去に関われた作品が与えている影響というのはどのようなものがありますか?

穴吹:細かいところから大きなところまで、影響はかなりありますね。『スカーレットネクサス』はストーリードリブン型のRPGとして、お話を進める流れのなかでのプレイヤー体験を非常に重要視しているのですが、そのあたりの設計には『テイルズ オブ』の経験が活きていると思いますね。

例えば、ブレイントーク(※1)の会話の長さもひとつひとつ場面に合わせて調整していますし、プレイヤーが退屈しないように、カットシーンは連続させずにバトルをはさむようにもしています。

ブレイントーク
※1 ブレイントーク:移動中やバトルの合間でリアルタイムに発生する仲間との会話。会話は自動で進むので、探索や戦闘を進めながら会話を楽しむことができる

塚本:ブレイントークはふとした拍子に仲間が話しかけてくれたりするのがいいですよね。

穴吹:お話を進めていく中でのプレイヤー体験が心地良く、魅力的なものになるようにする、というのは『テイルズ オブ』シリーズでも気をつけていた部分で、『スカーレットネクサス』でも特に注意して作っている部分です。

ゲーム全体のテンポ感だけでなく、ゲームシステムの部分についても、『テイルズ オブ』シリーズで導入して手応えを感じたものを取り入れつつ、『スカーレットネクサス』用にカスタマイズして実装しています。

飯塚:穴吹さんは『テイルズ オブ ヴェスペリア』でもディレクターを務めていて、そこで作り上げたバトルアクションの手触りのよさなどを本作にもしっかりと取り込んでくれましたね。

『スカーレットネクサス』の特徴にもなっている超脳力バトルの要素を入れつつ、アクション部分のおもしろさにもこだわってくれるだろうとは思っていましたが、期待どおりのアクションに仕上げてくれたと思います。

穴吹:そう言ってもらえるとうれしいですね(笑)。

――『テイルズ オブ』シリーズの経験を活かして作品を作るうえで、逆にそういった作品との差別化も意識されたかと思いますが、違いを出すためにどのような部分に力を入れていますか?

穴吹:過去作品との差別化には一番気をつけましたし、苦労した部分でもあります。新しいものを作るからには、自社タイトルと並べたときにしっかり別物になっていないといけませんからね。

『スカーレットネクサス』では『テイルズ オブ』シリーズでチャレンジできなかった要素を取り入れていて、個々人の戦いよりも人々を襲う怪異と戦う怪異討伐軍、通称“怪伐軍”という戦闘集団の物語を描いています。

怪異討伐軍、通称“怪伐軍”

戦闘集団の戦いや絆を描く物語は創作のジャンルとして普遍的にあると思うんですけど、個人的にすごく好きなジャンルで、いつかそういうものを企画にしたいなと考えていました。

シリーズものだと表現するのが難しいテーマかもしれないけど、新規タイトルならチャレンジできるかも、と思ったんです。そこで、自分たちが持つ知見や技術を活かしながら、自分のやりたかったテーマを乗せてほかのタイトルとの差別化も図りつつ作ったのが、今回の『スカーレットネクサス』なんです。

海外の反応も意識した、わかりやすいモチーフとクールなデザイン

飯塚さん
『スカーレットネクサス』のプロデューサーを務める飯塚さん

――『CODE VEIN』でもワールドワイドに向けてアプローチをされたということですが、『スカーレットネクサス』の海外展開で意識した点はありますか?

飯塚:根底にあるキャラクターの表現やストーリーライン、そういったものは全世界で共通して楽しんでいただけると思うので、そこはブラさずに作っています。

海外向けというので特に気をつけたのは、モチーフを分かりやすくするところですね。『CODE VEIN』では吸血鬼、バンパイアをモチーフにして、使っている字こそ違いますが『スカーレットネクサス』では超能力をモチーフにしています。吸血鬼や超能力って、一言でどんなものかが伝わるじゃないですか。世界に向けて展開するうえでは、分かりやすい言葉で表せるものにすることには気をつけています。

超脳力
『スカーレットネクサス』では人類が生まれながらに持つ超感覚“能力”が存在する。そのなかでもとりわけ強い力を持つものが“超脳力”と呼ばれ、念力や発火などの力が怪異への対抗戦力となっている

穴吹:飯塚さんが海外とのコミュニケーションを積極的に取ってくれたので、そういう部分ではすごく助かりました。

塚本:ゲーム中で“脳駆動(ドライヴ)”という必殺技を発動したりすると、キャラクターがフードを被った状態になってビジョン(脳をネットに繋ぐことで見える画像・映像のようなもの)が出て、仮面を付けたような見た目になるじゃないですか。あの演出も普段とは違う状態になったのがひと目で分かりますし、格好いいですよね。

穴吹:いいですよね。ビジョンが出る演出も、実は最初の頃はゲームシステムのごく一部として採用されていたものなんです。

ビジョンが発生する様子

でも、このビジュアルが海外でものすごくクールだと言われていると聞いてからシステム全体を構築し直して、ビジョンが発生した状態でプレイヤーが活躍できるように調整を入れました。

ほかにもダメージ表現なども評価が良かったので、そういった部分の露出を強くするように、仕様を変えた部分はいくつかあります。

塚本:国内版のメインビジュアルはキャラクターたちが顔を出した状態ですけど、海外版だとフード姿にビジョンが出た状態ですよね。

飯塚:そうなんですよね。フードを被るっていうのは海外でもクールな表現として用いられているので、そのあたりも考えて海外に向けた調整は行っています。

海外版のビジュアル
海外版のビジュアルはキャラクターの顔を見せず、よりダークな印象が強くなっている

――フードが海外でクールと受け取られたのは偶然だったようですが、そもそも最初にデザインとしてフードを取り入れた理由というのは?

穴吹:ダークヒーローらしさを出したいと思ったのがきっかけですね。超能力って、かっこいいけど危険な感じがするものだと僕は思っているんです。

漫画やアニメなんかでも、すごい能力だけど自分の身体にかかる負荷も大きいことを表現するために、能力を使った後に鼻血が出るような演出があるじゃないですか。

塚本:ありますね。すごく強いけどその分リスクも大きい、みたいな。

穴吹:そうです。そういうところを表現するために、見た目もダークヒーローっぽくしたかったんです。超脳力が極まってくるとフード姿にビジョンが出る、という構想は早い段階で出ていました。そこからアートディレクターがこだわりを持ってデザインをしてくれて、今の形に仕上げてくれました。

細かな部分にもこだわりを詰め込んだビジュアルデザイン

――デザイン面について伺いたいのですが、主人公たち怪伐軍の衣装も少し変わっていますよね。

塚本:シルエットなどを見ると、個人的には忍者がベースになっているのかな、という印象がありますけど、そのあたりはどうなんですか?

穴吹:デザインは基本的にテックウェア的というか、機能性を追及したうえでファッション性もあるようなものイメージしています。怪伐軍のメンバーについても、戦いに特化した機能性を持ちつつも、都会に馴染むようなファッションというのがベースになっています。

加えて、例えばカサネなら忍者の要素を、ユイトなら武者鎧の要素を入れるなど、キャラクターごとに個別のモチーフを入れ込んでいます。

穴吹さん

――各キャラクターが持つ超脳力の特性は漢字をシンボル化したようなアイコンで表されていますが、こちらのデザインにはどのような意図が込められているのでしょうか?

穴吹:あれもこだわって作った部分で、例えばユイトやカサネのアイコンであれば、念力の“念“という字にも見えるけど、記号の上矢印にも見えるように作ってあります。

脳力アイコン
透視ならば“目”の字が目のような形に、瞬間移動ならば“瞬”の字がスキップボタンを思わせるアイコンになっているなど、文字がイメージに合う形で表されている

僕からは「漢字としてしか識別できないようにはしないでほしい。漢字にも見えるのはいいけど、まずは記号として認識できることをベースにしてほしい」という風にオーダーを出しています。

結果として各キャラクターのモチーフとなっている漢字が良い具合に入って、記号に見えるけれど漢字としても機能している、みたいな良い形に落ち着いたかなと思っています。

塚本:アニメだと超脳力のアイコンは毎回手描きで描いているで、苦労した部分でもありますね。アニメを見るときにはそこも見ていただけるとうれしいです。

――アイコン以外でもビジュアル的にこだわった部分はありますか?

穴吹:個人的に格好よくて好きだなと思っているのは、超脳力を使うときにキャラクターの頭から出るエフェクトですね。

脳に負荷がかかっていることが分かるようにカタカナや数字や記号などの文字を出しているんですけど、それが見た目としても格好よく仕上がってくれました。

ノスタルジーを漂わせる90年代風の世界

――SF的な世界でありつつ、懐かしさのある背景も本作の特徴だと思いますが、こちらはどのように作り上げられたのですか?

穴吹:ここはアートディレクターの落合(※2)がこだわった部分で、90年代の日本の街並みを彷彿とさせるような、ノスタルジーを感じられる形にしたい、というのがスタートとしてありました。

※2 落合功多:『アイドルマスター』シリーズのUIデザインや『ソウルキャリバー』シリーズ、『ゴッドイーター』などのデザインに携わる。

そこで、90年代の映画やアニメを研究したり、昔の日本の面影が残る土地を実際に歩いてみたりして、作品の中で描かれる世界のイメージを固めていきました。

――世界のイメージを90年代に設定されたのは、現在から近すぎず遠すぎずの時代だから、なのでしょうか。

穴吹:落合が「バブルが終わったくらいの日本の雰囲気がいいよね」という風に言っていたのが大きいですね。

それに加えてノスタルジーを感じさせたいとなったときに、少し前まではノスタルジーと言えば80年代が人気だったので、次に来るのはその先の時代じゃないか、という考えもあって90年代を選びました。

飯塚: 90年代は良い感じに昔ですし、でも振り返ってみるともうそんなに前なのか、くらいの距離感だと思うんですよ。

塚本:20世紀から21世紀に変わるタイミング、いわゆる世紀末で、心霊写真とかオカルト的なものも流行っていた時代ですよね。

飯塚:あのころって、技術的な部分では未来に向けて期待感がありつつも、全体的に変な不安がある。そういう両面が入り混じった、カオスな時代だったじゃないですか。

『スカーレットネクサス』の世界も、単に科学技術が発達してすごく便利になったのではなくて、実は異質な面があったり、裏があったりするので、そういう意味でも90年代というのはマッチしていると思いますね。

穴吹:昭和から平成に変わったのが1989年で、その直後の時代というのもありますし、今につながる部分もあれば、そのときにしか流行らなかったものもあって、本当にカオスな時代だったと思います。

ゲームに出てくるスオウという街の電気街なんかは、当時の新宿をイメージして作られているんですけど、改めて街並みを眺めてもらうとそれが感じ取れるかなと思います。

塚本:スオウは本当に、昔の新宿の街並みを思わせる雰囲気になっていますよね。

スオウの街並み
ゲームで頻繫に訪れるスオウの街並みにはビル群に広告やニュース映像が雑多に表示され、田舎の風景とはまた違ったノスタルジーを漂わせている

ゲームとアニメ、どちらから入っても楽しめる『スカーレットネクサス』の世界

塚本さん

――アニメについて、演出などで特にこだわっているポイントはありますか?

塚本:念力を使うときなどのアクションシーンで、背景を描かずに透過光を使って見せている部分があるんですけど、この演出は昔ながらの日本のアニメーションをリスペクトしたものになっています。

背景がないからごまかしなんじゃないか、と思われるとちょっと寂しいのですが、監督としても狙って入れている演出なので、そのあたりにも注目してもらえたらうれしいです。

透過光演出

アニメは基本的にゲームをベースとして作り上げているので、アニメ側で勝手に要素を増やすようなことはしていませんが、視聴いただいた方からは“サンライズらしいアニメ”になっているというお声をいただいています。

新しい作品として楽しめる部分もありつつ、そういったサンライズアニメらしさみたいな部分も楽しんでいただけるかなと思います。

――アニメの『スカーレットネクサス』で、特に注目してほしいポイントはどこでしょう?

塚本:序盤からどんどん話が動いていき、中盤にかけて激しく展開するところに注目ですね。

飯塚:アニメもゲームと同じストーリーラインを追っていくのですが、ゲームと同じ場面でもアニメではまた違った表現で展開されていくので、すでにゲームを遊ばれている方にもぜひ見ていただきたいです。

逆にゲームをプレイしていなくても一から楽しめるので、ぜひアニメをご覧いただいてストーリーのおもしろさを体感してほしいですね。

穴吹:『スカーレットネクサス』ではさまざまな思惑を持ったキャラクターが登場するので、それぞれの表情だったり、各カットの見せ方だったりに注目してほしいですね。

細かく見ていただくと、後になって「あのときの演出はそういう意味だったのか」と気づけるところも多いかと思います。

――それでは最後に、ゲーム、アニメを問わず『スカーレットネクサス』に興味を持っている人に向けて、メッセージをお願いします。

穴吹:本作は新規タイトルだったので、発表時には「どんなゲームなのかがわからない」という声もありましたが、無料体験版も配信されているので、気になる人はぜひそちらを試していただければと思います。

アニメも放送、配信されているので、アニメを見て世界設定がおもしろそうだと思った人にはぜひゲームも遊んでほしいですし、逆にゲームをプレイしてこの世界が好きになったら、ゲームでは描かれていない部分をアニメで楽しんでほしいですね。

ゲームとアニメ、どちらから入っても楽しめる作品になっているので、ぜひよろしくお願いします。

塚本:穴吹さんがおっしゃったとおり、どちらが入り口でもいいので、できれば両方楽しんでいただきたいと思います。

最初のころから穴吹さんともずっと話しているのですが、アニメで一番やらないといけない、アニメにこそできることっていうのは、やっぱりキャラクターそれぞれの魅力をお客さんに見出してもらうことかなと思っています。

メインキャラクターが10人、サブキャラクターを含めるともっといるんですけど、その中から好きなキャラクターを1人、2人、あるいはそれよりも多く、見つけ出してもられえたらうれしいです。

飯塚:『スカーレットネクサス』は新規タイトルとして、ゲームとアニメの両方で展開させていただいていますけど、我々が作る日本のコンテンツのおもしろさ、キャラクターやストーリーの良さを、ぜひ世界中の皆さんに楽しんでもらえたらと思っています。

ゲームでは超脳力を用いた爽快なアクションを楽しめますし、アニメではゲームで描き切れなかったキャラクター同士の掛け合いや細かい表情なども描いているので、ぜひどちらかに触れていただいて、気になったらもう片方も楽しんでみてください。

ゲームもアニメも、ぜひ感想をSNSで呟いていただければと思います。「#ScarletNexus」や「#スカーレットネクサス」などのハッシュタグをつけてもらえれば、我々も見つけやすいので、ぜひよろしくお願いします。

左から、飯塚さん、穴吹さん、塚本さん

村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのゲーム関連記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。

ほぼ同時に制作が進められたゲームとアニメの制作の裏話を中心に伺ったインタビュー前編はこちらから!

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