格ゲーメーカーのキーマン集結「第2回 日本格ゲーメーカー連合会」レポート! コロナ禍で格ゲーシーンはどう変わったか?

対戦格闘ゲーム・通称“格ゲー”を盛り上げるため、メーカーの垣根を超えて担当者が集まる「日本格ゲーメーカー連合会」。その第2回生配信が2021年2月21日に行われました。コロナ禍におけるリモートワークでのゲーム開発、通信環境の変化、そしてオフラインイベントの未来まで、さまざまなテーマのトークが交わされ、さらには「鉄拳7」の新DLC(ダウンロードコンテンツ)の情報も公開されました。この記事ではその模様をレポートとしてお届けします。

「第2回 日本格ゲーメーカー連合会」がYouTubeで生配信

対戦格闘ゲームジャンルのコミュニティ拡大を目的に、対戦格闘ゲームを制作・販売する日本国内の各メーカーのプロデューサーやディレクターたちが手を取り合って主体的に格闘ゲームコミュニティ(通称FGC=Fighting Game Community)に対して情報発信していく「日本格ゲーメーカー連合会」。

2021年2月21日(日)、第2回目となるYouTube生配信が行われました。

前半の座談会コーナーでは、各タイトルのプロデューサーやディレクター、宣伝担当やesports担当者が集まり、用意されたテーマに沿った内容でトークを繰り広げました。さらに、後半には各タイトルの新情報やDLCなどの告知も行われました。

出演者】(※敬称略)

アークシステムワークス株式会社
石渡 太輔(『ギルティギア』シリーズ 総監督)
森 利道(『ブレイブルー』シリーズプロデューサー)
片野 アキラ(『ギルティギア ストライヴ』開発ディレクター)

株式会社アリカ
西谷 亮(『ファイティングEXレイヤー』プロデューサー)

株式会社SNK
小田 泰之(SNKチーフプロデューサー)

株式会社カプコン
松本 脩平(『ストリートファイターV』プロデューサー)
中山 貴之(『ストリートファイターV』ディレクター)

株式会社バンダイナムコエンターテインメント
原田 勝弘(『鉄拳』シリーズチーフプロデューサー)
安田イースポーツ(esportsプロデューサー)

コロナ禍以降、格ゲーを取り巻く環境はどう変わった?

まさに「格ゲー連合」の名に相応しい豪華な面々が集まった「第2回 日本格ゲーメーカー連合会」。

その内容から、各トークテーマについての、バンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘さんと安田イースポーツさんの発言を抜粋・編集してご紹介します。

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原田 勝弘

『鉄拳』シリーズチーフプロデューサー

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安田イースポーツ

esportsプロデューサー

リモートワーク下での開発環境について

――新型コロナウイルス感染症の拡大がはじまり、約1年。多くのゲームがリモートワークを導入しながら開発されています。その中でバンダイナムコグループでは、どのような開発環境にあるのでしょうか?

原田:バンダイナムコスタジオはかなりリモートワークが進んでいて、出社率は5%〜10%程度です。大変な面もありますが成立しています。これだけリモートワークが浸透した理由としては、経営陣がリモートワークを推奨したことが大きかったと思いますね。デザイナーはとんでもなく大きな機材を自宅に送って作業しているので、二度と会社に来られないんじゃないかと思うくらいです(笑)。

――業界内でも屈指のリモートワーク導入率を誇るバンダイナムコグループ。しかし、原田さんはその一方でリモートワークゆえの困難もあると話していました。

原田:実機など機密保持のために社外に持ち出せない機材もありますし、完全にリモートワークはできないですね。そしてコロナ禍で大変なのは、ネットワークテストです。『鉄拳』はこれまで通信対戦のテストのために、アメリカやヨーロッパに行ってホテルから繋いでテストしていたのですが、今のご時世でそうしたことができなくなってしまいました。

そこで今回、開発中のソフトウェアを『鉄拳』のコアなファンに渡して、アメリカの西海岸と東海岸で対戦してもらうなどのテストを行いました。開発陣だけじゃなくコミュニティの方まで開発に参加してもらったわけです。逆に言えば、そんなやり方をしないとネットワークテストができないという状況なんですよ。

――そしてビデオ会議が増えるなか、対面でのコミュニケーションが減っていることへの懸念もあるそうです。

原田:『鉄拳』以外の新しいプロジェクトも担当していますが、この1年は一緒に仕事をしているのに一度も会ったことがない人もいます。バンダイナムコエンターテインメントに限らず、これから2年後くらいに世に出るコンテンツって、コロナ禍のリモートワークでうまくコミュニケーションを取ることができずに作られた「もっと良い物にできたはず」という作品が増えてしまう懸念があります。

ネットワーク対戦における通信環境の変化について

続く話題は、ネットワーク対戦の通信環境について。原田プロデューサーが『鉄拳7 Season4』で取得したデータをもとに、有線LAN接続とWi-Fi接続の比率の現状についてプレゼンテーションを行いました。

『鉄拳7 Season4』配信前の1か月と配信後の1か月の比較

原田:上のグラフがSeason3の最後で、下がSeason 4の最初の1ヶ月のランクマッチ(※プレイヤーのランクごとに分かれて、最高位の「レジェンド」を目指して戦うモード)におけるデータです。ランクマッチのユーザーはシビアな競技者が多いこともあり、ローンチ直後は10%ほど有線が増えました。ここまでは予想通りでしたね。

原田:そしてこちらはSeason4配信から2か月以上経過した2021年1月と、その一年前の同月の比較です。1年前は有線とWi-Fiが半々だったのに、有線が60%、Wi-Fiが40%になりました。一見有線が増えているように見えますが、PSやXboxではWi-Fi利用が大きく増えています。

この理由はカジュアルなユーザーがたくさん増えているからだと考えられます。『鉄拳7』は今も毎月10万本ずつ売れているので、それだけカジュアルなユーザーが多いということですね。ちなみに全体の対戦回数は、一年前よりも2倍以上に増えています。

『鉄拳7 Season4』に見るネットワーク対戦環境状況まとめ

1. 全ての統計データを紐解くと、『鉄拳7 Season4』で全体のユニークプレイヤー数とアクティブユーザー数の両方が増加。比例してランクマッチ数も増加。ヒアリング抽出による調査では、特に有線/Wi-Fiを気にしないプレイヤーも増加。

2. 『鉄拳7 Season4』でオンライン対戦が快適になったと評価された結果、Wi-Fiでも快適にプレイできると判断したプレイヤーが増加。

3.現状では、全体統計で有線接続率は10%向上したものの、対戦機能強化の影響もありコンソールプレイにおけるWi-Fi率は依然として高い。

コロナ禍におけるイベント事情

最後2つのトークテーマ「コロナ禍におけるイベントや大会の在り方」「格ゲー連合会でオフラインイベントを開催するとしたら」は、数多くのイベントが中止となったこの1年間を象徴するような話題に。

安田:とにかくオフラインイベントが開催できない一年でした。ワールドツアーも含め自分たちで仕込んできたものを自分たちの手で次々とキャンセルせざるを得なくて、特に4月ごろにはストレスで激太りしてしまいました……。

原田:そうだよね。今日参加しているメンバーって、みんな海外の大きな格ゲーイベントの会場で会っているような面々だけど、もう全然そうしたイベントに行けていない。この状況が落ち着いたら、ファンの方々も集めて大きな大会をやりたいですよね。

格ゲーメーカー連合会でイベントをやるとしたら?

原田:せっかくだから、これを機会に昔の「闘劇(※1)」のようなイベントを、格ゲーメーカーで集まってやりたい。今は各社協力できる体制もありますし、「EVO」(※2)みたいな大規模な大会をやりましょうよ。これまでなかなか実現してこなかったけど、やりたいことはみんな一緒ですし。

※1 闘劇:エンターブレイン及び『月刊アルカディア』が主催した対戦型格闘ゲームの全国大会。2003年の第1回大会から2012年の第10回大会まで毎年開催されていた。当時、国内では最大規模の対戦型格闘ゲームイベントであった。
※2 EVO:“Evolution Championship Series”の略称、1995年から毎年8月にアメリカ・ラスベガスで開催されている世界最大級の対戦格闘ゲームの大会。

原田:例えば、バンダイナムコエンターテインメントが母体になって、軌道に乗ったら各社持ち回りにするのはどうかなあと。『ストリートファイター』シリーズはやはり格ゲー界の象徴的なタイトルですし、そこはもう少しカプコンさんと深い話をしたいなと思っています。

安田:各メーカーごとにコミュニティへのアプローチの違いはあれども、みんなで手を組んで、格ゲーや各タイトルの盛り上がりにつなげて行きたいですね。格ゲーメーカー連合会も第1回目と第2回目は配信の形を取っていますが、また次回があれば違う形で行いたいと思っています。

原田:今は90年代みたいにギスギスしてないし、一番みんな仲の良い時代ですからね(笑)。

「鉄拳7」DLCで新キャラ登場。なんとポーランドの首相が参戦!

――バンダイナムコエンターテインメントの告知コーナーでは『鉄拳7』の新DLCが発表されました。

原田:今回参戦するキャラの設定は「ポーランドの首相」です。いろんな方に協力してもらって制作しています。

「第2回 日本格ゲーメーカー連合会」で発表された『鉄拳7』の新キャラクター、ポーランド首相”リディア・ソビエスカ”はDLCとして配信済み。ぜひプレイしてみてください。

また、『鉄拳』シリーズのTシャツやパーカーがMerch by Amazonで発売中。今後もデザインが追加予定との旨が安田イースポーツさんからアナウンスされました。

最新の格ゲー開発事情や、ネットワーク対戦事情について、そして今後のイベントについてのディスカッションが行われた「第2回 日本格ゲーメーカー連合会」。そのフルバージョンは鉄拳チャンネルにて公開されています。ぜひご覧ください。

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取材・文/坂上 春希
1984年生まれのコンテンツプロデューサー。ライター/カメラマンとしても、ガジェット、ビジネス、インテリア、カルチャー、テクノロジー等の分野に渡りメディアや広告の分野で活動中。