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【宮河社長対談連載】第三回 後編 西川貴教さんと語る「エンターテインメント×未来」

バンダイナムコエンターテインメント宮河恭夫社長が、社内外のゲストと「新しい生活様式」にまつわるさまざまなことについて対談する連載。第三回のゲストは、アーティストの西川貴教さんです。後編となる今回は、コロナ禍で変化するエンターテインメントとその未来について語り合っていただきました。

出会いのきっかけである『機動戦士ガンダムSEED(以下、『ガンダムSEED』)』の話などを聞いた前編はこちら

お客さまとアーティストの掛け合いから新しいものが生まれる

西川貴教さん
T.M.Revolutionでは『機動戦士ガンダムSEED』の『INVOKE -インヴォーク-』、
『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の『ignited -イグナイテッド-』などのテーマソングを担当。2018年には西川貴教名義にてデビュー。アーティストだけでなく舞台、映画、MCなど幅広く活躍している。

――西川さんがライブや舞台で感じる一体感、醍醐味はどのようなものですか?

西川:新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、多くの観客を集めて皆さんの前でパフォーマンスをする機会が減ってしまい、オンラインで映像や音楽を届けることがそれほど特別なものではなくなってきた気がします。もちろんオンラインはあってもいいのですが、ステージでお客さまを前にした時の、あの歓声やあのザワザワとした感じが音楽に乗ってきて初めて完成! みたいなものを目指したいと思っています。難しい問題はたくさんありますが、諦めずにいたいですね。

宮河:西川さんがおっしゃるように、ライブってお客さまとアーティストの掛け合いみたいなところから新しいものが生まれてきますよね。僕らの仕事でも、雑談のなかからクリエイティブなことって生まれてくる。今、うちの会社は出社率が3~4割くらいで、今日も会社に行ったらほとんど誰もいませんでした。作業は進むから仕事にはなっているし、伝達はネットで十分だと思う。でも僕は、「3時のお茶を出すから、たまには会社に来て」って、社員の皆さんにいつも言っているんです。「雑談をしながら、新しいことを次につなげていってね」そんなメッセージを会社で絶えず発信するようにしています。

西川:本当にその通りだと思います。僕も会議の時には企画の種になるものを持って行き、自由にアイデアを出しながらどんどん合わせていくタイプなんです。オンライン会議をする機会も増え、「これをこんなふうにしていつまでにやりましょう」と決めていくことはできるから問題はないのですが、「今日の会議でここまで来られたか!」みたいな達成感を得ることは少なくなっている気はします。

クリエイティブなことは、FACE TO FACEで会ってやるべき

バンダイナムコエンターテインメント宮河恭夫社長
『機動戦士ガンダムSEED』や『機動戦士ガンダム00』といった00年代の作品に関わり、2010年代のグループコンテンツ×ライブ事業を支えたことでも知られる。

宮河:僕が怖いのは、全世界的に、あと2年とか3年後にクリエイティブの力が落ちるのではないかということ。クリエイティブなことは、やはりFACE TO FACEで会ってやるべきじゃないかな。

西川:音楽はまさにそうですよね。先ほど話したように僕らライブをやっている側も、会場のあの雰囲気から生まれて出てくるものが絶対ありますから。オンラインでは、「こんなモノが出ちゃったんだ」みたいな予想外なことは出ない感じがします。僕も去年から配信ライブなどを何度か体験しましたが、決められたことはきっちり届けられていても予定通りにいくだけで、それ以上でもそれ以下でもない感じはあるので。

宮河:失敗もしないんだけど、130%が出にくくなる印象はありますよね。

西川:まさにそうですね。

宮河:そこはちょっと怖いところですよね。

――配信ライブなど、皆さんがさまざまな取り組みを行っている最中ですが、お二人が注目されているデジタル技術などはありますか?

宮河:この前、『アイドルマスター』のライブがお客さまを入れて開催する予定が急きょ無観客になったんですよ。それを決めた途端に舞台がすごいシンプルになって。最初はそれを見て、「え?」と思ったんですけど、この一年でARがけっこう進んでいるんですよね。実際にネットで見てみたら、ものすごいステージになるわけ、ARだから。

西川:はい(笑)。

宮河:あ~、なるほど! リアルだったらふんだんに装飾しないといけないところが、ネットでの無観客ライブになるとARでここまで楽しいことができるんだと思いました。大きな風船が飛んだりしていたけど、あの演出をリアルでやるとしたら大変ですし(笑)。そのような点では、新しいものがようやくスタートしてきた感じがしましたね。

西川:先日、僕の仲間のDJも、クロマキー(※グリーンやブルーバックを背景にして別の映像を合成する技術)を使ってイベントをやっていましたが、実際に映像を観たらとんでもないものに仕上がっていましたからね。そういうことができるなら、建て込みセットなど作らなくても……(笑)。

宮河:そうそう(笑)。

西川:そういった部分にお金を投資できれば、また違ったエンターテインメントを届けられる可能性もありますよね。もちろん、有観客で行うライブのすばらしさは忘れたくない。でもその一方で、例えば会場を決める際に「そのキャパシティを埋められるのか?」や、逆に「チケットが取れなくなる人が出てきたらどうしようか?」など、考えないといけないところを減らせるメリットもある。配信という一つのプラットホームがあれば、そこに対して無限に入ってもらえるわけですから。それこそ、国を渡らずとも世界の皆さんにつながってもらえる機会を増やしていけるなら、これをきっかけに世界に対してアプローチすることができないのかというふうにも考えられますし。今はようやく「5G」ですけど、将来的に「6G」や「7G」に進化していって、“一人ひとりのためのライブ”のようなことができるようになれば、特別感のある新たなコンテンツとして届けられるかもしれないですよね。

「僕だったら将来こんなふうにしてみたいなぁ……」という思いが、技術や文化の発展につながる

――10年後、20年後、エンターテインメントの楽しみ方はどう変化していくと思われますか?

宮河:「変化」というのは、僕が考えることではないと思っているんです。昨年12月から横浜で公開されている実物大の動くガンダムでいうと、我々が提示したあのガンダムを10年後20年後にどうアレンジしていくか? それをみんなで考えてほしいわけです。「僕は“素材”を出すから、あとはみんなで考えなよ」っていうことですね。あるものを完成品として見て、「ああ、おもしろかったな」で終わるのではなく、「僕だったらこうしたい」とか「私だったらここを変えたい」っていうふうにそれぞれが考えてくれるとすごくおもしろくなってくる。あれを見た小学生・中学生の子が、「僕だったら将来こんなふうにしてみたいなぁ……」っていうことが、技術や文化の発展につながるので。そういう意味で横浜の『ガンダム』は、完璧に「素材」ですね。もちろん、エンターテインメントとしておもしろい。おもしろいんだけど、「素材」なんです。僕はこんなふうに「素材」を出してあとは各々で考えてね、ということを意識しています。

西川:今後、通信・デジタル技術が進んでいくことで、「疑似体験」が可能になることは増えると思います。でも一方で「体験」そのものを届けることが重要になってくるとも思うんです。ものやデータより「体験」すること。それが結局、自分自身の資産になるっていうことなのかなって。エンターテインメントに限らず、学習にもスポーツにも言えますよね。一度に多くの情報を得ることができたり、世界中のあらゆるスポーツの結果やデータを一挙に知ることができたりはするけど、データで見たその球がどれくらい速いか、あの選手がどれくらい大きいか、映像を通して聴いている音が実際にはどんな圧力で来るかとか、そういう体験はできない。それは今後どんな状況になっても、必要だと思うんですよね。

宮河:うん、絶対必要ですよね。

西川:先ほど宮河さんがおっしゃったことにもつながると思うんですよね。僕もエンターテインメントとして何らかの形で必ず届けられるように準備をしていきたいです。

宮河:デジタルが進めば進むほど、アナログってすごく貴重になってきますからね。話は少し逸れますが、最近、僕の会社で会議をする時は、ヨーロッパとアメリカにいる人たちも参加するんですよ。「何時ですか?」って聞くと、「朝の4時です」とか「夜中の12時です」とか(笑)。

西川:ハハハ(笑)。時差問題は大変ですね。

宮河:今は海外出張に行けないということもあって、僕も去年、海外でのカンファレンスに出席するために夜中の2時に会社へ行って、オンラインで参加したんです。そこで思ったのは、時差も含めて、「ちょっとだけ我慢すれば克服できることってけっこうあるな」と。実際に自分で体験してみてから、それをよく考えるようになりましたね。

西川:なるほど。

宮河:夜中の2時にひとりで会社行って、カンファレンスに出るっていうのがけっこうおもしろくて。最近のうちの会議は“Good Morning!”から始まるし、そうやって工夫していくことも楽しいですよ。

日本で育ったすばらしいコンテンツを、自信をもって海外に届けたい

――何事も楽しんでみる、という意識は大切ですね。では最後に、宮河社長は西川さんへ、西川さんは宮河さんに対してメッセージをお願いします。

宮河:2回目の「バンダイナムコエンターテインメントフェス」をはじめ、今後も西川さんと一緒におもしろいことをやっていきたいですね。

西川:こうして長年のご縁があって、宮河さんとはいろんなお話をさせてもらっています。実はもうずいぶん前から、自分の中で勝手に考えた案というか、「こんなアイデアって形になるものですかね?」っていう種のような段階から相談させていただいている案件がいくつもあるんですけど……。

宮河:ありますよね(笑)。

西川:日本で育ったすばらしいコンテンツを、自信をもって海外に届ける。日本の良さをより多くの人に伝えるきっかけ作りを宮河さんと一緒にやっていければいいなと思っています。

宮河:本当にそうですね。コロナ禍が収束したら、いくつかは実現できると思いますので、ぜひご期待ください。

西川:はい、お願いします!

当日の対談の模様を動画で公開!

今回のアソビモットのスペシャルコンテンツとして、メイキング含めた当日の対談の模様を公開いたします! 記事内ではご紹介していなお二人のトークもございますので、併せてお楽しみください!

さらに、「バンダイナムコエンターテインメント2022年度卒向け新卒採用HP」でも対談動画を公開! エンタメ業界で働くことの魅力や、業界がどう変化していくか? 就活生への応援メッセージも交えて、お二人に語っていただいておりますので、こちらも是非ご覧ください。

バンダイナムコエンターテインメント2022年度卒向け新卒採用HP
未来のエンタメ人求む! 対談動画公開!

【取材後記】
「エンターテインメント×未来」をテーマに、宮河社長と西川貴教さんの対談を前後編でお届けしました。17年来の親交があるお二人ということで、終始なごやかながらも、アニメーションや音楽、ライブに対する真摯な思いが伝わってくる熱い時間となりました。進化し続ける技術を柔軟に取り入れつつ、リアルにこだわるお二人による次のコラボを心待ちにしたいと思います。

取材・文/草野美穂子
出版社勤務を経てフリーの編集者/ライターとして活動。書籍、雑誌、WEB記事などの編集、取材を行う。2021年1月に発売された写真集『西川貴教 五十而知天命~五十にして天命を知る~』ではインタビューを担当。

過去の宮河社長対談連載記事はこちら!
第一回 前編 『アイマス』坂上P&『鉄拳』原田Pと考える「リモート時代のエンターテインメントづくり
第一回 後編 『アイマス』坂上P&『鉄拳』原田Pと考える「テクノロジーが変えるエンターテインメントの形」
第二回 前編 市川海老蔵さんと考える「ニューノーマルのエンターテインメント」
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