アソビ×働く

増田セバスチャンによるパックマンのアート作品が誕生!KAWAIIとパックマンの意外な共通点

『パックマン』が今年2020年に40周年を迎えたことを記念して、バンダイナムコ未来研究所のロビーにパックマンの巨大な時計型アート作品が登場! 手掛けたのは、“KAWAII”を世界に広めたアーティスト、増田セバスチャンさん。今回のコラボレーションの狙いや経緯など、増田セバスチャンさん、バンダイナムコエンターテインメント社長・宮河恭夫さん、パックマン担当の宇出津和仁さんに話をうかがいました。

バンダイナムコ未来研究所ロビーに巨大なパックマン時計が登場!

バンダイナムコ未来研究所ロビー
バンダイナムコ未来研究所ロビー

1980年に誕生し、ゲームの歴史を変えた『パックマン』。いまやゲームキャラクターの枠を越え、80年代カルチャーのポップアイコンとして世界中から愛されています。

今年2020年、『パックマン』が40周年を迎えたことを記念して「バンダイナムコ未来研究所※」のロビーに設置されたのが、巨大な時計型のアート作品「Primal Pop(PAC-MAN Mix)」。レストラン『KAWAII MONSTER CAFE HARAJUKU』のプロデュース、きゃりーぱみゅぱみゅさんのデビュー時の美術演出などで世界から注目を集め、「KAWAII」文化の代表的な存在である増田セバスチャンさんが制作しました。

※バンダイナムコエンターテインメントなどバンダイナムコグループの社屋。一般の方の立ち入りは禁止しております。

“KAWAII”×『パックマン』、共通点は「アソビ心」

左から宇出津和仁さん、増田セバスチャンさん、宮河恭夫社長

――今回のコラボレーションはどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

宮河: 私が増田さんの個展(2019年8月30日〜9月16日開催の『Forever Colors』)を見に行ったことがきっかけです。もともと、バンダイナムコ未来研究所のロビーが殺風景だと感じていたのですが、その個展で『世界時計』(東京・原宿の観光案内所に飾られていた作品「Colorful Rebellion –World Time Clock-」)が展示されているのを見て、「これだ!」とひらめき、その場で制作をオファーしました。

宮河恭夫社長
バンダイナムコエンターテインメント代表取締役 宮河恭夫社長

——社長はなぜ『世界時計』に感銘を受けたのでしょう?

宮河:ものすごくゴチャゴチャしていて(笑)、楽しかったんですよね。バンダイナムコエンターテインメントの企業理念として「アソビきれない毎日を」を掲げているのですが、まさに『世界時計』は遊びきれないほど遊び心にあふれる作品だったので『パックマン』と融合させたらおもしろいだろうな、と感じたんです。

——増田さんは今回のオファーがあった時にどう感じましたか?

増田:ぼくも『パックマン』は小学生の頃にはゲームセンターでプレイしていたし、1990年代に仕事でロサンゼルスに滞在していたときにも、『パックマン』のグッズをたくさん買い集めていて。『パックマン』がとても好きだったので、宮河社長から声をかけてもらったのは本当にうれしかったです。時計という存在は、時の流れを感じさせつつも、未来の時を刻むものなので、社屋のエントランスにもピッタリだと思いました。

「ぼくの中に小学2年生男子を降臨させて作った」”Primal Pop”が意味するものとは

増田セバスチャンさん
アーティスト 増田セバスチャンさん

——今回の作品についてお話を聞かせて下さい。

増田:今回はけっこうなチャレンジをしました。先ほどの『世界時計』と通じる作品ではあるんですけど、実は似て非なるものなんです。ベースになるアルミのボードにまずは古き良きアメリカの広告や商品ロゴなどのコラージュを貼り込み、その上に世界中から集めたいろんなマテリアルや僕の私物コレクションなどを構成して、さらにペインティングを施しています。何層にもアイテムとコンテクストが折り重なっている作品で、まったく新しいものができたな、と思っています。

——パックマンの作品に他社のロゴや広告をあしらうというのも、すごく大胆ですよね。

宮河:よく見ると米国の玩具メーカーのロゴが貼ってあったりするんだけど、うまい具合にわからないようにしていただいているので、おもしろいし、我々としてはまったくもってOKです(笑)。

『Primal Pop(PAC-MAN mix)』 ディティール
『Primal Pop(PAC-MAN Mix)』 のディティール

——なぜ『パックマン』と古き良きアメリカや世界各国のマテリアルとを合体させようと?

増田:ぼくのファンには女の子が多いんですけど、その一方で『パックマン』ってぼくと同じようなメンズファンが多いじゃないですか。その人たちに向けた作品を作るとき、単純に“KAWAII”をコンセプトに作っても響かないだろうなと思ったんです。ちゃんと彼らの記憶を呼び起こすようなものにしたいなと思いました。

だから『パックマン』が大ブームになった古き良きアメリカと昭和の日本独特の空気感を合体させたかったし、そしてそれをなんと呼ぶかといったら、今回の作品のタイトルでもある「Primal Pop」……原始的なポップカルチャーだろうという気がしたんです。例えるなら小学校2年生の男の子が好きなおもちゃやシールをたくさん与えられたとき、どういうふうに並べるか? ぼくの中に小学2年生男子を降臨させて作ったのがこの作品なんです。

——社長はそのコンセプトを聞いたときの印象はいかがでしたか?

宮河:いや、今日初めて聞きました。個展で『世界時計』を見て「これだ!」と思って頼んだだけ。あとは増田さんと宇出津にお任せしていました。私は企画が立ち上がったら、あとは当日の納品を楽しみにするタイプなんです。

初めて『Primal Pop(PAC-MAN mix)』を見る宮河社長
初めて『Primal Pop(PAC-MAN Mix)』を見る宮河社長
『Primal Pop(PAC-MAN Mix)』が設置される様子

——では『Primal Pop (PAC-MAN Mix)』の現物を見たのは公開日である今日が初めてだったのでしょうか?

宮河:初めてですね。すごくインパクトがありました。バンダイナムコ未来研究所って、玄関からエスカレーターで2階のロビーに上がってくるじゃないですか。そのエスカレーターを上がってくるときにだんだん巨大な『パックマン』の姿が見えてくるのがいいですよね。この「だんだん見えてくる」っていうのはすごく重要で。十数年前に東京・お台場に等身大ガンダム像を建てたんだけど、あれも、台場駅から公園を抜けて、展示場所であるダイバーシティ東京プラザの敷地を目指すと徐々にガンダムが見えてくるようになっていました。そのだんだん見えてくる様子って、人の期待をすごく煽ってくれますよね。

増田:実は宮河社長からは「うちの会社、2階のロビーが殺風景だから、なにかインパクトのあるものを」というオーダーをいただいただけだったりするので(笑)、あの展示スタイルを気に入っていただけたならなによりです。制作期間と新型コロナウイルス感染症の自粛期間が重なったのもあり、作品制作にいつも以上に集中できたし、自分自身すごく楽しくお仕事させてもらえました。

初期のラフスケッチ
初期のラフケッチでは、パックマンの隣にゴーストが

ワールドフェイマスな『パックマン』というアイコンと“KAWAII”カルチャー

——その楽しい仕事、つまり実務は先ほど社長がおっしゃっていたとおり、増田さんと宇出津さんとで進めていかれたと。

宇出津:はい。あと展示空間や時計の設計のプロデュースは乃村工藝社さんにお願いして、時計のパーツはシチズンさんに制作していただきました。

増田:基本的にはぼくがラフスケッチを提出して、宇出津さんと「ああでもない、こうでもない」って詰めていく感じでしたよね。しかも今回は制作についても、自分のアトリエのスタッフは大きくは関わっていないんです。

宇出津和仁さん
第3IP事業ディビジョン ライセンスプロダクション パックマンルーム
アシスタントマネージャー 宇出津和仁さん

——名のあるアーティストさんの作品って、その方がコンセプトやデザイン画を固めたら、あとはアトリエの方々やお弟子さんと実作していくと思っていました。

増田:もちろん配置のバランスを見たり、強度の検証をしたり、マテリアルの貼り付けについてはスタッフに手伝ってもらっていますけど、今回は90%くらいひとりでやっています。ほら、時間があったから(笑)。状況が状況だったし、外にも出にくいので、アトリエに泊まり込んでずっとひとりで徹夜していました。

宇出津:あと我々がやったことと言えば、アメリカ、ヨーロッパ、中国のパックマンチームにも連絡を入れて、世界中から今回のアートに利用できそうな80年代から現在までのパックマンのグッズをかき集めること

増田:ものすごくレアなグッズが送られてきてビックリしました。これ、ホントに埋め込んでいいの? って。

宮河:いろんなバージョンのパックマンを使っているな、と思ったんだけど、そういうことだったのか。

宇出津:増田さんのアートを実現するために台座の設計などをどうするかの検討と、倉庫をひっくり返すのがぼくらの仕事でしたね(笑)。

左から宇出津和仁さん、増田セバスチャンさん、宮河恭夫社長

——世界中から『パックマン』グッズを集めたとおっしゃっていましたが、やはり『パックマン』はワールドフェイマスな存在なんですね。

宮河:そうですね。日本よりも北米のほうが圧倒的に認知度が高いし、ビジネス規模も大きいです。そういうこともあって古き良きアメリカの広告やロゴをベースに使ったんじゃないんですか?

増田:そういう意図もありました。

宮河:だからそのアメリカのポップ感と増田さんが表現する“KAWAII”というすごく日本的なポップ感の混ざり合ったいい作品を作っていただけたな、と思っています。原宿は増田さんの根城なんだけど、わたし自身も子どものころから原宿では遊んでいて。実は増田さんより原宿歴は長いんですよ(笑)。50年前の原宿を知っていますから。だからこそ、増田さんの価値観・世界観にもすごく共感できました。

『Primal Pop(PAC-MAN mix)』 ディティール
世界中から集められた『パックマン』グッズとアメリカのポップなモチーフたち

——ただ、社長が遊んでいた当時の原宿と、増田さんが今標榜なさっている“KAWAII”原宿は、まとっている空気はかなり変わってきているのではと想像しますが、共通点はどういった点にありますか?

増田:日本の最先端のポップカルチャーが生まれる場所という意味では今も昔も変わりません。また、今の原宿だって突然降って湧いたようにできあがったものじゃなくて、宮河社長が遊んでいた頃からの歴史があっての今だと思います。

宮河:そうですよね。だから増田さんの作品に惹かれるんだと思います。

増田:しかもその原宿発のポップカルチャーは海外にも飛び火している。実際、今アメリカの西海岸ではアニメやゲームはもちろんだし、ラーメン屋さんやお弁当に至るまで、本当に日本製品、日本のカルチャーが席巻しているんです。だから今のアメリカの若い世代は原宿的、日本的なポップカルチャーにまず触れているから、そこをリンクさせてみたかったし、リンクさせることに違和感はないだろうと思った。それも『Primal Pop (PAC-MAN Mix)』のテーマのひとつですね。

増田セバスチャンさん

——そういう意味では『パックマン』に限らず、バンダイナムコエンターテインメントが手がける自社コンテンツはいずれも原宿的カルチャーと接触するし、さらには海外へと波及するポテンシャルを持っていると感じられていますか?

増田:そうですね。日本のカルチャーに興味のある人たちって世界中に本当にいっぱいいるし、その中には自分でその文化の影響下にあるコンテンツを作っていたり、そういうビジネスを立ち上げている人も少なくない。当然彼らはバンダイさん、ナムコ(当時)さんの過去の作品についても詳しかったりする。だからまだまだいろんな作品を通じて、世界中のいろんな人と一緒に新しいものを生み出せると思いますよ。

宮河:商売の観点から言っても、日本やアジアって全体の売り上げの半分以下しか占めていないですから。世界にユーザーがいるという意識を持つことは当たり前。新たなアイデアはまだまだ出るでしょうね。

『Primal Pop(PAC-MAN Mix)』はウェブで公開! グッズの展開も!?

——今回の増田セバスチャン×『パックマン』企画ですが、バンダイナムコ未来研究所で展示されるだけでなく、もっと広く発信されることを期待しますが…。

宇出津:むしろこれからの企画と言ってもいいかもしれないですね。まず『Primal Pop (PAC-MAN Mix)』を世界中のどなたでも鑑賞できるページをパックマン公式ホームページに設置しています。あと増田さんには『Primal Pop (PAC-MAN Mix)』から派生させたパターン画(PAC-MAN SPECIAL ART by Sebastian Masuda)を作っていただいていて。このアートを使ったアイテムを自社で開発・販売します。また世界中のライセンシーさんにも商品化のご案内を差し上げていきます。ライセンス商品を通して、世界中のお客様に楽しんでいただきたいな、と考えています。

宮河:このパターン画のデザインいいねえ。

増田:これ、CGじゃなくて写真なんです。それこそバンダイナムコエンターテインメントさんにご協力いただいてパックマンのグッズを大量に集めて、それを上から写真で撮影しています。

『Primal Pop (Pac-Man mix)』から派生したデザイン案
『Primal Pop (PAC-MAN Mix)』から派生したデザイン案

——この力作のパターン画を使ってどんなアイテムが生まれることを期待しますか?

増田:ストリートウェアは作ってほしいですね。パーカーとかマスクとか。北米のヒップホップ系の人にも似合いそうなオーバーサイズのアイテムとか。

宮河:喜んで身に付けさせていただきます(笑)。

増田:あとゲームの『ギャラガ』ともコラボレーションしたいかなあ。社内に筐体があって、お!と思いました。

宇出津:来年『ギャラガ』が誕生40周年を迎えるんですよ(笑)。

——それが実現したら、バンダイナムコエンターテインメントの自社コンテンツのアニバーサリーには増田セバスチャンさん、というのがお約束になりそうですね(笑)。

増田:ぼく自身はそうなりたいんですけどね。ナムコ(当時)さんのゲームってすごく未来感がありましたから。8ビットという限られた条件の中で作られるからこそ、こちらのSF的な想像力をかき立ててくれていて。そういうコンテンツと絡めたらなあと思っています。

宮河:ナムコ(当時)の自社コンテンツはおもしろいですよね。我々としても当時の資産は当然活用したいから、またぜひご一緒したいですね。

増田セバスチャン×パックマンのグッズをアソビストアで受注開始!

Tシャツ、缶バッジ、アクリルキーホルダー、ステッカー

インタビューのとおり、増田さんのアートを使用したパックマングッズ「PAC-MAN Special Art by Sebastian Masuda」シリーズの予約受付をアソビストアで開始しています。持っているだけで楽しくなるようなKAWAIIパックマングッズを、ぜひチェックしてくださいね!

グッズ情報はこちら!
【PC】https://shop.asobistore.jp/feature/pacman_sebastianmasuda/
【スマートフォン】https://shop.asobistore.jp/s/feature/pacman_sebastianmasuda/

取材・文/成松哲 プロフィール
フリーライター→「音楽ナタリー」編集部を経て、再びフリーライターに。