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バンダイナムコヨーロッパが生んだ人気タイトル『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』。その誕生秘話と最新作への思い

フランスのリヨンにあるバンダイナムコエンターテインメントヨーロッパ(以下、BNEE)に向かい、制作陣にお話を聞く取材の第2弾。今回はBNEE発のオリジナルIP『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』プロデューサーのルカさんに、新規タイトルを立ち上げる際の工夫や、2020年内予定のシリーズ最新作について聞きました!

「自分の想像力で物語をつくってほしい」。ダークでキュートな世界観に込めた想い

『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』シリーズのプロデューサー、ルカ・ルッセルさん
『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』シリーズのプロデューサー、ルカ・ルッセルさん

――2017年に1作目が発売された『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』は、もともとどんなアイデアで生まれたものだったのでしょうか?

ルカ:『リトルナイトメア』では、小さな子ども・シックスが退廃的な世界を進んでいくのですが、それは私たちの小さい頃の記憶、特に「悪夢」のようなものを彷彿とさせます。このコンセプトは、ともに開発を進めたスタジオが出してくれたものでした。
彼らはサイコロジカルホラーやTVのシリアス作品、本といったさまざまなものから影響を受けていて、その結果、『リトルナイトメア』は悪夢的な世界観でありつつも、同時にキュートでもあるという、その2つのバランスが取れた作品になったと思っています。

――プレイしていてまず印象的だったのは、シックスを筆頭にした登場人物が言葉を発しないため、サイレント映画のように、プレイヤーが物語を想像できるということでした。

ルカ:それはとても大切なポイントです。「こちらからは見せすぎない」ことを大切にして、自分の想像力で物語を作ってほしいと思っていました。この作品では、登場人物がセリフを喋るわけではありませんから、ストーリーテリングにおいても、デザインがとても重要な意味を持っています。キャラクターの造形や動作、そして攻撃をしてこないときも含めたモンスターの細かい動きなど、さまざまな要素を組み合わせることで、物語を伝えているんです。

インタビューに答えるルカ氏

ルカ:キャラクター設定はそのひとつですね。このゲームには、大きく分けて「子ども」と「モンスター」という2通りのキャラクターが登場します。まず、子どもたちは「純粋であること」の象徴です。ただ、物語の最後では、それだけではない要素も出てきますけど。

一方でモンスターには、現実の世界の「悪い行いをする人々」の姿を反映しています。それを誇張して描いているので、とてもグロテスクで、子どもの頃に見た悪夢や、さまざまなものを思い起こさせるはずです。

たとえば、現在制作中の『リトルナイトメア2』に登場するティーチャーというキャラクターは、誰もが子どものときにひとりは会ったことがあるであろうサディスティックな教師を誇張したもので、長い首で、思いもよらない角度からも子どもを監視します。

――なるほど、ゲームに登場する「子ども」と「大人」には、現実のさまざまな要素が反映されているのですね。そのうえで、子どもも無垢なだけの存在ではないというふうに、善悪の基準を改めて考えさせられるような雰囲気も魅力的でした。

ルカ:はい。1作目では、シックスが最後にとある衝撃的な行動をしますよね? 実は、私たちがアイデアとして最初に考えていたのは、「シックスがもともとそういう面を持っている子だったのか」、それとも「モウ(冒険の舞台となる不思議な船)の環境が彼女を変えてしまったのか」ということを、プレイヤーに問いたい、というものだったんです。

年内予定のシリーズ新作は、2人のキャラクターの関係性がカギを握る作品に?

――『リトルナイトメア』は、各ステージに用意された豊富なギミックも印象的です。こうしたステージごとの仕掛けについては、どんなふうに考えていったのでしょうか?

ルカ:私たちは、このゲームで遊んでくれるすべてのプレイヤーに「子どもの頃の感覚をもう一度体験してほしい」と思っていました。そのため、それぞれのステージで仕掛けの役割を果たすイスやテーブル、ドアノブの位置といった要素は、すべて大人用のサイズで用意されています。

大人にとっては簡単に手が届くものであっても、小さなシックスやモノたちからすると、あらゆるものがとても高すぎたり、とても遠すぎたりして見えるんです。そして、彼女たちは先に進むために、想像力を働かせて解決方法を見つけていく必要があります。

プレイヤーは『リトルナイトメア』1作目ではシックスを、2作目ではモノを操作することになりますが、たとえば1作目では、シックスが高いところによじのぼる際にも、プレイヤー自身がそれを登っていると感じられるように工夫しました。

インタビューに答えるルカ氏

――シックスやモノのキャラクターメイキングの面で工夫したことも教えてください。

ルカ:1作目と2作目では少し状況が違うのですが、1作目の場合は、主人公のシックスと、周りの景色やほかの登場モンスターたちとの間に、コントラストをつけたいと思っていました。そのため、シックスはグロテスクなモンスターたちとは対照的な、小さな女の子になりました。また、シックスが着ている黄色のレインコートも、ダークな世界観の中で、どこにいても目を引くようなキャラクターにするために工夫した部分です。

――なるほど。1作目では操作できるプレイヤーと、そのほかの要素とのコントラストを大切にしていった、と。

ルカ:はい。そして、現在制作中の『リトルナイトメア2』では、新たに主人公としてモノが登場し、1作目の主人公シックスは、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)としてプレイヤーに同行します。つまり、プレイヤーが操作するのは前作と同じく1人なのですが、画面上は2人でステージを進みます。ですから、新キャラクターのモノについては、シックスの黄色のレインコートとは違う手法でアイコニックに感じられる方法を模索して、「頭に紙袋をかぶる」というアイデアが生まれました。

――2人の関係性も気になるところです。

ルカ:『リトルナイトメア2』では、物語としては、モノとシックスの関係性がとても重要です。その関係性が、まるでローラーコースターのように上下するんです。2人はとても危険な世界を冒険しますから、助け合わなければ前に進むことはできません。ですが、「果たして本当に、この子を信用していいだろうか?」ということも、お互いに感じることでしょう。

2作目においても、2人は言葉をしゃべりませんから、2人がどんなふうに出会って、どんなふうに関係を築くのか。もしくはお互いをどう思っているのか。どのように助け合っていくのか――。私たちはそのすべての要素を、キャラクターの動きなどによって表現して、プレイヤーのみなさんに想像してもらいたいと思っています。

インタビューに答えるルカ氏

――前作よりもさらに複雑でリッチなゲーム体験が期待できそうで、とても楽しみです。

ルカ:そうなるように、熱心に取り組んでいるところです。そのためにはキャラクター同士の動作/アニメーションがとても重要で、たとえば、『リトルナイトメア2』では、モノとシックスが手を繋ぐことで先に進める場面も出てきます。ダークな世界の中で、小さな子どもたちが手を繋ぐ瞬間は、非常にキュートで、エモーショナルなシーンになると思いますよ。

――1作目についての反響を受けて、2作目に反映される要素もありそうですか?

ルカ:実は1作目のときは、尺が短いゲームを作ることで、たくさんの方に安価でゲームを楽しんでもらいたいと思っていました。ですが、プレイ後の感想として、「物語が短すぎたので、もっと長く遊びたかった……」という意見が非常に多かったんです。そこで『リトルナイトメア2』では、よりボリュームのあるゲーム体験を目指しています。「ただ続編を作る」のではなく、「新しい体験ができるゲームを作る」ために努力しているところです。

――特に日本のファンからの反響として、印象的だったことはありますか?

ルカ:日本の方々は、シックスというキャラクターの可愛さに注目してくれて、シックスをキャラクターとして愛してくれているように感じます。

「まだ世に出ていないアイデアを生み出したい」。オリジナルIPならではの魅力とは?

ルカ氏

――BNEEから生まれた『リトルナイトメア』は、日本にも多くのファンが存在しています。新規オリジナルIPを生み出すことは、ルカさんにとってどんな経験になっていますか?

ルカ:とてもいい経験になっています。けれども、困難な面ももちろんありました。新規IPの場合、過去のデータがないですから、自分たちが作っているゲームが果たして受け入れられるのか、予測をすることが難しいんです。ですが、チームのクリエイティビティを信用して、ゲームの世界観を信頼することで、1作目ではそれを乗り切ることができたと思います。

『リトルナイトメア』は、幸運にも売り上げもよく、ヨーロッパやアメリカ、アジア、日本などさまざまな地域の人々に楽しんでもらえました。それは私たちにとって、とてもいいアドベンチャーでした。『リトルナイトメア2』も、いい旅になってくれるといいな、と思います。

インタビューに答えるルカ氏

――最後に、ルカさんがBNEEで働いていて印象的だった思い出があれば教えてください。

ルカ:私はもともと日本のゲームに多くかかわってきて、BNEEでヨーロッパやアメリカのマーケットに向けて仕事をはじめました。そのため、『リトルナイトメア』も、当初は欧米のプレイヤーにターゲットを絞っていました。ですが、結果として、この作品は日本も含む幅広い地域の人々がプレイしてくれました。これは私たちにとって、とても嬉しい驚きでした。

この作品ではいろいろな要素がひとつになっていて、ホラーゲームかというとそういうわけではありませんし、暴力表現が多いゲームでもありません。先に進むためには想像力を働かせる必要がありますが、かといってパズルゲームというわけでもありません。ひとつのジャンルに分類することが難しい、とてもユニークなタイトルだと思っています。

まだ世に出ていないアイデアを持ったゲームを生み出すことはなかなか難しいですが、マスマーケットにおいてそういう作品を生み出すことができたことについても、嬉しいと感じています。

【取材後記】
不思議でどこか心惹かれる魅力を持った『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』の開発にまつわるルカさんのお話は、とてもロジカルでありつつ、同時に童心も忘れないような雰囲気が印象的でした。2020年に発売予定の『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-2』では、モノとシックスの関係性を生かした、新たな冒険が体験できそう。その内容も、ますます楽しみです。

【取材・文 杉山 仁 プロフィール】
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。