人気RPG『テイルズ オブ』 シリーズ の魅力をリアルな場所へ!イベント担当・根岸Pの想い(前編)

23年間にわたって愛され続けている人気ロールプレイングゲーム(以下RPG)作品『テイルズ オブ』シリーズ。最近はリアルイベントにも力を入れています。イベント担当・根岸Pに、シリーズの関連イベントに込めた想いを語ってもらいました!

「作品を愛する人々が繋がれる場所を作るために」。『テイルズ オブ』シリーズのイベント事業に込められたアイディアとは?

1995年に発売されたシリーズ第1作「テイルズ オブ ファンタジア」を皮切りに、ロングヒットを続ける人気RPG作品『テイルズ オブ』シリーズ。このシリーズは横浜アリーナで開催される年に1度の『テイルズ オブ フェスティバル』(以下、テイフェス) を筆頭に、舞台作品『テイルズ オブ ザ ステージ』(以下、テイステ) 、旅行型ツアー『テイルズ オブ ツアー 沖縄編』など、様々なイベントも人気を博しています。その企画/運営を担当するバンダイナムコエンターテインメント LE事業部 イベント部 プロデュース課の根岸麻衣子さんに、年に一度のお祭りに込めた想いを聞きました!

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年に一度のお祭り『テイルズ オブ フェスティバル』ができるまで

――根岸さんは入社後すぐに営業担当としてかかわったPS2の「テイルズ オブ シンフォニア」以降、担当部署は変われど、何かしらの形で『テイルズ オブ』シリーズと関わってきたそうですね。このシリーズ自体にはどんな魅力を感じていますか?

『テイルズ オブ』シリーズは世界観やストーリーに人気があるのはもちろんですが、キャラクターデザインを担当されている藤島先生やいのまた先生が描かれるキャラクターが、パーティーキャラも敵キャラも含めて魅力的だな、とすごく感じます。それは先生たちが毎回、作品をよく理解して描いてくださるからこそだと思いますね。

だからなのか、それぞれのキャラに深い設定があって、大筋の物語だけでなく、キャラクターを深堀りする魅力もあると思うんです。そうやって何回プレイしていても楽しめるところが、『テイルズ オブ』 ならではの魅力だと思います。

また、なんといっても『テイルズ オブ』は、ゲーム中のBGMの良さも作品の魅力を盛り上げる要素の一つになってます。作品を代表するテーマソングも、アーティストの方たちに作品に対する思いを伝えたうえで作詞・作曲していただいているので、作品に寄り添った名曲が生まれています。『テイルズ オブ』の世界を彩る音楽があることも、このシリーズの魅力ですね。

音楽の魅力を伝えるために『テイルズ オブ』ではオーケストラコンサートも開催しており、
今年で開催4年目を迎えます。曲を聴くだけでゲーム中の名シーンがよみがえる方も多いので、『テイルズ オブ』の音楽の力は偉大だなと感じています。

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――年に一度、『テイルズ オブ』 シリーズの魅力を感じることができるイベント『テイフェス』を開催されていますよね。オリジナルのスキット(=朗読劇)や声優さんによる様々な企画コーナー、グッズ/フード販売などを通して楽しめるこのイベントは、そもそもどんな風に始まったのでしょうか?

『テイフェス』がはじまる前から『東京ゲームショウ』などでキャラクターの声を演じる声優のみなさんによる「スキット」を披露していたんですが、それをお客様にすごく喜んでいただけたんです。「せっかくならブースだけではなく、音響設備や舞台などが整った施設で、タイトルもシリーズ全体を網羅した単独イベントとして実施して、よりみんなで楽しめるイベントにしよう!」という想いから、朗読劇に加えて、アーティストライブやトークコーナー、グッズやフードでも作品を楽しんでもらう“フェス”的なイベントにしたいと思ったのがきっかけでした。
ですから、もともとクローズドな環境でやっていたものが、より大きなイベントに繋がった形ですね。

始まった頃は新作の発売タイミングでプロモーション的に開催することも多かったですが、今では年に1回開催される恒例のイベントとして定着しました。初めは声優さんも勝手が分からず色々と戸惑う部分もあったはずですし、スキットでは本来なかなか交わる機会のない『テイルズ オブ』 シリーズ内の様々な世界観が混在することになるので、不安な中演じられていたと思います。でも、声優さんのご協力と、お客様の温かい声援を受けて、徐々に今のような形になっていきました。

「声優さんの自由なアドリブを引き出したい」。人気コーナー「スキット」に込められたアイディア

――『テイルズ オブ』 シリーズは、もともとゲーム内でもキャラクターの掛け合いを大切にしているだけに、ゲーム作品にはめずらしく、声優さんはアフレコの際にもできるだけ同じ場所に集まって収録しているそうですね。
だからなのか、『テイフェス』でのスキットも、声優さんのアドリブがたくさん生まれていく雰囲気がとても印象的です。

みなさん、ファンサービス精神が旺盛な方がかかわってくださっているので、スキットではフェス当日もお客様の反応を見ながら演じ方を変えてくださったりしているんです。『テイルズ オブ 』シリーズは声優さん同士がとても仲がいいですし、作品に愛情を持ってくださっている方が多いので、フェスティバルも「声優さんたちが一緒に育ててくれているイベント」だと感じています。

実はスキット中にスクリーンに表示されるキャラクターの演出も、スタッフがプレゼンテーションソフトで用意して、声優さんのセリフに合わせてリアルタイムで動かしているんです。「決められた通りやってください」とお願いすれば、豪華なグラフィックに合わせてスキットを進めることもできますが、イベントではその場の生感を大切にしたいので、声優さんが自由に演技できるように、演技に合わせて手作業でスクリーンの映像を切り替えているんです。

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――スキットでの活き活きとした掛け合いが実現する背景には、会場でのそんな工夫があったんですね! ちなみに、特にアドリブが多い声優さんといいますと?

小野坂昌也さんや小西克幸さんは、台本にはないセリフを話されたりしますね(笑) 。やっぱりベテランの方はたくさんアドリブを入れてくださいますし、ノリのいいキャラクターの方が多いのかもしれませんね。アドリブで盛り上げてくださる方がいる一方で、それを軌道修正して本来のストーリーに戻してくださる方もいて、そういう意味でもみなさんが上手くバランスを取りながら、楽しいものにしてくれています。

また、スキットで作品の世界観を描きつつ、『テイルズ オブ』のネタを使ったバラエティコーナーも設けており、ここでは声優の方々の素の顔が垣間見えるコーナーになっています。
毎年司会進行 してくださる小野坂さんと開催前に企画の打ち合わせをして、実際に演じる声優さん側の意見も取り入れながら企画は決めています。どんな楽しいことができるか、より良いものにできるよう、出演者のみなさんそれぞれの個性をうかがって、活かせるようにしていますね。

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――これまでの『テイフェス』の中で、特に印象に残っている企画はありますか?

それはたくさんありますが、お客様には「テイルズ大喜利」がとても好評でした。今年の開催では「伝言ゲーム」をやりましたが、それも楽しんでいただけたのかな、と思っていますね。

――意外に全然伝わらなくて、とても盛り上がった伝言ゲームですね!

(笑)。そんな風に、声優さんの素が垣間見えるようなコーナーも楽しんでいただけると嬉しいですね。
これはイベントを作る上で悩ましいところなんですが、従来のシリーズファンの方はもちろんですが、新たに参入していただいたお客様にも楽しんでもらえる内容にしたいと思って作ってます。『テイフェス』では、そんな新旧ファン問わず、テイルズ愛を共有できる場としてすべての人が楽しめるイベントを目指しています。

「初めての人にも、常連の人にも楽しんでもらいたい」。人気シリーズだからこそ目指す「みんなが楽しめるイベント」

――何年も続く人気シリーズだけに、そのバランスを考えるのはとても難しそうです。

そうですね。そんな中、今年は新しく『テイルズ オブ』の世界観を旅行で楽しむ沖縄ツアーも開催しましたが、そこでお客様とお話しすると、意外にも『テイフェス』に行ったことのない方も参加してくれて、驚きました。

『テイフェス』が長く続いたことで、少なからず新規の方が参加しにくい雰囲気になっていたのかもしれません。そこで、最近作品を好きになってくれた方でも参加しやすいような工夫をもっと取り入れていきたいと思ってます。

イベント由来の台詞や掛け声もあるので、『テイフェス』開催10回目のパンフレットには解説集も収録しました。
キャラは知っていても、作品のストーリーを深くは知らないという方に向けて、たとえば、いつも『テイフェス』で、ネタ的に使われている鈴木千尋さん演じるルーク(テイルズ オブ ジ アビス)の台詞「俺は悪くねぇ!」は「実はゲームだとこんなにシリアスなシーンでいう言葉ですよ」ということを改めて作品解説をしました。

また、イベントの最後にはキャストさんと一緒に「ビバ☆テイルズ オブ!」というお決まりの掛け声で締めるので、「みんながこのタイミングでこう言うから、一緒に言ってみよう!」と、イベントにずっと来ている方なら当たり前なことも改めて解説を入れてみました。
こうすることで、少しでもイベントに新規参入しやすい環境作りをしていけたらと思ってます。

――『テイルズ オブ』 シリーズへの知識の差にかかわらず、来てくれた方がみんなで楽しめるものを目指すということですね。

そうですね。『テイフェス』ではスキットの部分も、みなさんが親しみやすいように現代的な世界観にしているんです。
たとえば、戦国時代を舞台にした作品であっても、多くの人が「教科書に載ってたかも」と考えますし、服装に現代的な要素が加わっていると、親しみやすいですよね。それに、どんな人でもある程度共有できる『宝探し』『運動会』などを盛り込むことで、『テイルズ オブ』シリーズのそれぞれのタイトルをやったことがない人でも、そのスキットが楽しめるようにしたんです。もちろん、作品のコアなファンの方がクスッとなるような瞬間も用意しています。

『テイルズ オブ』 シリーズの初心者の方でも、ずっと好きでいてくれる方でも楽しめるように、色々な要素をバランスよく盛り込むことを大切にしています。1年に一度のお祭りとして、みなさんで一緒に楽しめる場所を作れたら嬉しいですね。

テイルズ オブ ザ ステージについてはこちら ≫≫≫

©藤島康介 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
©いのまたむつみ ©藤島康介 © BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

【取材後記(前編を終えて)】
『テイルズ オブ フェスティバル』の立ち上げ当初のお話や、当日のステージでの工夫について語ってくれた根岸P。中でもキャストさんの楽しげなアドリブを引き出すための工夫は、『テイフェス』ならではのものだと感じました。

続く後編では、『テイルズ オブ ザ ステージ』や『テイルズ オブ ツアー 沖縄編』の話も交えながら、ゲームの世界観を現実に持ってくる際の工夫や、『テイルズ オブ』シリーズのイベントに込めた想いを聞きます!

人気RPG『テイルズ オブ』の世界観を再現するリアルイベント。作品を愛する人たちの交流の場にしたい(後編)≫≫≫

取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。