シリーズの想いをつなぐ場所。「テイルズ オブ フェスティバル」ができるまで

『テイルズ オブ』シリーズファンが集う年に一度の祭典「テイルズ オブ フェスティバル」が、2019年6月15~16日に横浜アリーナで 開催されました。その舞台裏を、イベントPの根岸麻衣子さん、MD部商品化担当の池田ななこさん、LE事業部長としてイベントを統括する田中快さんに聞きました!

イベントP、グッズ担当者、事業部長が語る「テイフェス2019」

スタッフ&キャストも本気で楽しむ! 「テイフェス」はみんなの“楽しい”が集う場所

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左から根岸P、LE事業部長の田中さん、商品化担当の池田さん

── ―年に一度の「テイルズ オブ フェスティバル」(以下「テイフェス」)は、いつもどのような流れで開催まで進んでいくのでしょうか?

根岸:企画はいつも半年以上前から練りはじめます。今回ですと2018年10月頃から企画立案、テーマに沿ったキャスティングがはじまっていましたね。それを踏まえて、毎年「テイフェス」では描き下ろしのイラストを用意しているので、その発注も年末にはすすめます。同時に、キャスティングとイラストの方向性をふまえて、MD部と相談し商品化していきます。今年のテーマ「アート」に合わせ、アートにちなんだグッズを池田が考えてくれました。

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イベントを取り仕切る根岸P。入社後すぐに営業担当となった『テイルズ オブ シンフォニア』以降、現在まで『テイルズ オブ』シリーズにかかわる

根岸:また、最近の傾向としてはアニバーサリー企画を増やしています。『テイルズ オブ』シリーズ自体が来年で25周年を迎え、タイトルによっては10周年、15周年を迎えるものも増えてきているので、それにちなんだキャスティングを意識するようにしています。

今年は「テイルズ オブ リバース」が15周年、「テイルズ オブ グレイセス」が10周年(PS3版「テイルズ オブ グレイセス エフ」は来年で10周年)ということで、それに合わせたキャスティングを行いました。既にマザーシップタイトルだけでも16作品、キャラクターは100以上いるシリーズですから、どこにスポットを当てるのかは常に悩んでいます。

アニバーサリーという切り口で初期のタイトルをピックアップすることで、キャスティングの幅を広げ、歴代のシリーズファンの方にも楽しんでいただけるイベント構成を考えています。新旧タイトルのファンみんなが楽しめるイベントにしたいと思ってますし、まだプレイしたことのない作品にもイベントで触れて興味をもっていただけたらうれしいです。

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イベント事業を手掛けるLE事業部のリーダーであり、『テイルズ オブ』シリーズのIP統括担当も務める田中事業部長

──「テイフェス」の目玉と言えば、キャストのみなさんによる「スペシャルスキット」だと思うのですが、ここにはどんなこだわりが込められているのでしょうか?

田中:シリーズを知らない方でも楽しめるものを目指しています。
スキットを見てシリーズに興味を持った方が、ゲームをより楽しくプレイできるものになっていると嬉しいですね。実際、ゲームはやったことがない方がご友人に連れられて「テイフェス」に来場して、そこからゲームにハマったという話も聞きます。
もちろん、『テイルズ オブ』の世界観を知っていればいるほど、「クスッ」と笑える要素もたっぷり入れていますので、初心者の方からコアな方々まで、みなさんに満足していただけると思います。

根岸:スペシャルスキットのお題自体も、どんな人でも楽しめるようなものにしています。「テイルズ オブ フェスティバル 2013」の2日目に披露した運動会をテーマにした「第1回 テイルズ オブ 大運動会 ~フィールドより愛をこめて~」も、そんな発想で生まれたものでした。
今年は新しい試みとして、エドナの歌(「ノルミンダンス」)を加えた演出を用意しました。また、最近はお客様の選択で物語が分岐する「分岐スキット」を組み込んでいます。
この部分では、どちらに分岐しても面白くなるよう、キャストの方々には「使われないかもしれないシナリオ」についても、本気でリハーサルをやっていただいているんですよ。

──それはすごいことですね!

田中:キャストの方々も我々と同じく、「テイフェス」を本当に楽しんでくださっているからこそできることですね。
「テイフェス」はスタッフとキャストのみなさんが一緒に作り上げるという雰囲気が特徴ですね。キャストの方々も決められたフォーマットにのっとって進めるだけではなく、自由度が高いんですよ。
そのため、過去には2時間の予定のイベントが大幅に延びてしまうこともありましたが……。「終電がなくなるからやめてくれ」という声をいただいて、本当にごもっともだと思いました(笑)。

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「当日だけでなく、日々の生活の中でも使えるものを」。グッズ制作に込めた思い

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「テイルズ オブ フェスティバル2019」のグッズ企画・制作を担当する池田さん。「テイフェス」のグッズは普段使いができることも考えられている

──「テイフェス」のグッズ制作についてはどのように進めているのですか?

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池田:たとえば、今年はテーマが「アート」だったので、パレットや絵の具のチューブ、筆などをモチーフにしてグッズを制作したり、通常は筒型になっているペンライトを刷毛の形にしたりしています。
デザインとして最初にこちらに上がってくるのはイベントのロゴなので、そのデザインや雰囲気をベースに発想を広げることが多いですね。
中でも定番グッズになっているのは、キャラクターを応援するための「公式応援セット」や、「公式応援リストバンド」などです。また、今回は新しい試みとして描き下ろしイラストと連動した商品もありました。

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根岸:最近は、描き下ろしのキャラクターの衣装を意識したファッションで来場してくださる方もいらっしゃいます。
今回はイラストと連動した商品も凄く人気で、実際に会場でも多くのお客さんに着用いただけた印象です。

池田:とはいえ、「テイフェス」当日だけではなく、普段使いもしてもらって、『テイルズ オブ』シリーズを近くに感じてもらえたら嬉しいです。
例えば今回のブルゾンなどはキャラクターとリンクさせるのであれば赤や青などビビッドな色展開となるのですが、そこを普段着用しやすいよう、色をネイビーに変更し「アナザーカラー」として展開しています。
今は「バウンドコーデ」(編集部注:バウンドファッションとも。私服の中で、色やアイテムをキャラクターと合わせることを指す。)も流行っているので、キャラクターのカラーを上手くファッションに取り入れていただく楽しみ方をして頂けたらいいなと思って。
ファッションアイテムはトレンドを取り入れたものも人気で、去年公式ビッグTシャツを出したのも、最近オーバーサイズが流行っていることを意識したものでした。

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池田:サコッシュ風のポシェットは、片面が透明になっていて自由にデコレートできるのもポイントです。
「テイフェス」が終わってからも楽しめるように、もともとのデザインはあえてシックな色合いにして、ロゴだけを入れたものにしています。こうした普段も使えるグッズと、イラストを前面に打ち出したフェス感満載のグッズとの両軸を展開する事で、さまざま角度から「テイルズ オブ フェスティバル」を楽しんでいただけたらいいなと思っています。

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もともとはシックなデザインのポシェット。イベント当日はデコレーションして思い切りフェス仕様に

田中:グッズ以外だと、毎年用意している「ホテルプラン」は、キャストさんをお呼びしてのディナーパーティーなどもあり、即日完売する人気プランです。
イベント自体は2日間のうちのそれぞれ数時間ですが、地方からきてくださる方々もいますので、(宿泊日も含めて)3日間ずっと『テイルズ オブ』の世界に浸っていただきたいと思って用意しました。

根岸:フードも趣向を凝らしていますね。
今年は『テイルズオブ』シリーズ 定番の回復アイテム「マーボーカレー」を、フェス飯として食べ歩きにも便利な「マーボーカレーパン」にしました。

「テイフェス」は“来場者とのキャッチボール”で10年以上続いているフェスティバル

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──観客の方々を見て「こんな楽しみ方をしてくれるんだ!」と感じた瞬間はありますか?

池田:ビバ☆くんの公式ツイッターに「#テイフェス準備中」というハッシュタグがありますが、それを見てみると、当日に向けてお客様が色々な準備をされていることが分かります。
クロスステッチでキャラクターを刺繍する方がいたり、アクセサリーを自作されている方がいたり、『テイルズ オブ』仕様のネイルをされている方がいたり……。参加してくれる方々も、本当に色んな楽しみ方を見つけて盛り上がってくださっているのが印象的です。

田中:フェスはお客様の生の声、要望が聞ける、私たちにとっても大切な場なんですよ。

──まさに、みなさんの想いが形になっていくのですね。今年は歴代のテーマソング担当アーティストによる生ライブでは、DEENさんとBONNIE PINKさんにご出演頂きましたよね。

根岸:実は今回、DEENさんの「夢であるように」の際に流した映像は、「テイフェス」の初期の頃に、田中が作ったこだわりの映像なんです。これは、もともとゲーム用の短い尺だったものをフルコーラスのライブと連動させるために、様々な素材を組み合わせた特別映像ですよね?

田中:そうだ。思い出した(笑)。当時は今のような機材がなかったので、映像編集がものすごく大変でした。DEENさんの歌の歌詞と、絵が上手く合うものを選んで繋いで……。本番の1週間前にはほとんど会社に行かず、スタジオにこもってずっと作業していました。

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──シリーズの歴史だけでなく、これまでの「テイフェス」自体の歴史も、今に引き継がれているのですね。来年で『テイルズ オブ』シリーズは25周年を迎えます。「テイフェス」もますます盛り上がっていくのではないでしょうか?

根岸:「テイフェス」は、『テイルズ オブ』好きのスタッフたちが、お客様に世界観やコンテンツを楽しんでもらいたい一心で作り上げている、年に一度の集大成的なイベントです。これからも、キャストの方々も含めて、みんなで楽しく作っていけたらと思っています。

池田:グッズ担当としては、フェスを大いに盛り上げて、終わった後も余韻に浸っていただけるような、そんなグッズをこれからも提供していきたいと思っています。

田中:「テイフェス」は、お客様と私たちのキャッチボールだと思っているんです。私たちが提供したものを、お客様が楽しんでくださって、それが私たちの次へのモチベーションに繋がっていく。その繰り返しで10年以上も続いているのは、本当に幸せなことだと思います。『テイルズ オブ』が好きな方や、初めて会場を訪れた方も含めて、もっともっと喜んでいただけるように、これからも頑張っていきたいと思っています。

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みなさんで「ビバ☆テイルズ オーブ!!」 


テイルズ オブ フェスティバルの当日の様子は、後日ご紹介いたします。楽しみにお待ちください!

【取材後記】
テイルズ好きの、テイルズ好きによる、テイルズ好きのためのフェスティバル「テイフェス」。ビギナーからコアファンまで、すべての人が楽しめる夢のような空間は、スタッフのみなさんの「愛情」と「情熱」によって、これからも末長く続いていくことでしょう。

取材・文/黒田隆憲
フリーライター。音楽を中心に、カルチャー全般のインタビューやライティングを手がける。『シューゲイザー・ディスクガイド』(監修)、『メロディがひらめくとき』など書籍も多数。