アソビ×学ぶ

“アソビ”の枠を越えたゲームの可能性。「ゲームが社会を解決する」

『朝日教育会議』の第二弾として、東京工芸大学と共催されたシンポジウム「ゲームが社会を解決する――Game as Solutions」。ゲームがアソビを越えて社会貢献できる可能性について講演の模様をお伝えします。

元ナムコ・岩谷さん、遠藤さんも登壇!シンポジウム『朝日教育会議2019』

元ナムコ・岩谷さん、遠藤さんも登壇!シンポジウム『朝日教育会議2019』

今では全世界の市場規模が15兆円に到達するとも言われるゲームには、アソビとしての魅力だけではなく、「社会のインフラ/社会をよりよくするもの」としての可能性も期待されています。そうしたゲームの役割に焦点を当てたシンポジウム「ゲームが社会を解決する――Game as Solutions」が、9月21日(土)、東京・イイノホールで開催されました。

このシンポジウムは、朝日新聞が全国14大学と協力し、「教育の力で未来を切り拓く」をテーマに開催する『朝日教育会議』の第二弾として、東京工芸大学との共同主催で実現したもの。アートとテクノロジーの相互連携/融合をかかげる東京工芸大学には、芸術学部に「ゲーム学科」が存在し、未来のゲーム制作の担い手を育成しています。

そして、そのゲーム学科には元株式会社ナムコ社員だった岩谷徹さんと遠藤雅伸さんのお二人が教授として在籍されています。
そこで今回、バンダイナムコエンターテインメントとも深いご縁のあるお二人がアカデミックな視点で語るゲームの可能性について、アソビモットでも取材させていただきました。

元ナムコ・岩谷さん、遠藤さんも登壇!シンポジウム『朝日教育会議2019』
▲岩谷徹さん
1977年にナムコに入社。大人気作品「パックマン」を手掛け、「リッジレーサー」などをプロデュース。「パックマン」は後に「世界で最も成功した業務用ビデオゲーム機」としてギネスブックに登録されました。
元ナムコ・岩谷さん、遠藤さんも登壇!シンポジウム『朝日教育会議2019』
▲遠藤雅伸さん
1981年のナムコ入社以来「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」といった大ヒット作を手掛け、「ゲームの神様」とも呼ばれています。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

シンポジウム本編は、東京工芸大大学の学長・義江龍一郎さんによる挨拶を経て、まずは遠藤さんによる第一部の基調講演からスタート。ここでは「『ゲーム道』にみる日本の特異性」と題して、世界のゲーム市場と比較した日本独自の特徴がまとめられました。

遠藤さんによると、世界のゲーム市場は18歳から25歳の男性ユーザーが80%を占めているのに対して、日本の男女比はちょうど半々。世界で最も女性ユーザーが多く、年齢層も非常に幅広いことが特徴になっているそうです。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

その理由として、日本では女性が遊ぶゲームがつねに市場にあったことを、『ミニテトリン』や『たまごっち』、ニンテンドーDSの『脳トレ』、PCブラウザやスマートフォン向けゲームなどの事例を挙げて時代ごとに解説。
さらに、PCブラウザゲームの売り上げがもっとも高くなる時間帯が10:00~12:00であることから、家事の合間にゲームを楽しむ“キッチンゲーマー”の存在についても示唆されました。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

また、対戦ゲームにおいて世界のスタンダードになっているランキング制とは異なる、武道や芸道から受け継がれてきた「段・級位制」のシステムにも触れ、「勝負」だけでなく「自分自身の技を追求すること」に重きが置かれるという特徴を説明。

そうした特徴が、日本ならではのシリアスゲーム(プレイすることで知識が蓄えられるゲーム)や知育玩具の豊かさに繋がっていること、また、見た目が可愛いキャラクターでも攻撃力を見て「強い」と受け入れられる「見做し」の文化に繋がることに言及しながら、「多様性が日本のゲームの原点」であることと、自分との戦いを楽しむ「ゲーム道」としての魅力が普及していることを伝えました。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

続く第二部「工学・芸術としてのゲーム学~大学でゲームを学ぶということ~」では、岩谷さんと東京大学教授/VR教育研究センター機構長の廣瀬通孝さんが登壇。大学でゲームを学問として学ぶことについて論じました。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

まずは岩谷さんが、2007年に誕生した東京工芸大学のゲーム学科設立の経緯を説明。当時のゲーム市場が上り調子であったことや、工業立国から知財立国にシフトしていく国の政策に合致したことなど、当時の世相の後押しや、多くのメーカーの協力によって実現したことを語りました。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ
日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ
▲岩谷さんが開発した、プレイヤー・ディスプレイ・コントローラーの3要素を一体化させた全身ウェアラブル型「ゲーミング・スーツ」も解説。

学問としてのゲームの独自性については、「工学」や「人文学」など様々な知見が必要になることを紹介。それぞれの学問領域の知見をもとに用意されたカリキュラムにも触れながら、「感動をもたらすゲームをつくるためには人の気持ちを考えることが必要」、つまり「ゲーム学とは人の心を知ること」と締めくくりました。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ
日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

廣瀬さんは、ご専門のVR技術について、その歴史や独自性を解説。世間では2016年が「VR元年」と言われているものの、実際に「VR(Virtual Reality)」という言葉が世に出てきたのは30年前の1989年であることや、そこからVRの研究がどのように進んできたのかを総括されました。

同時に、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)の違いも解説。そのうえで、VRの独自性や「バーチャルならではの世界観をつくること」の大切さ、更には定年後の高齢者の方々の知見をVR技術によってひとつの労働力に結集するアイデアなど、VRが社会に貢献できる可能性について紹介されました。

日本のゲーム文化の特徴とは?アソビとはまた違う、ゲームを「学ぶ」ということ

社会の課題解決に広く活用!ゲームが持つ無限の可能性

第三部「世界はゲームで満ちてくる」では、第一部、第二部の内容を受け、朝日新聞社総合プロデュース室の山田亜紀子さんをコーディネーターに、遠藤さん、廣瀬さん、そしてゲームを活用した教育やゲーム的な要素の社会利用の専門家として知られる東京大学・大学総合教育研究センター講師の藤本徹さんによるパネルディスカッションが実施されました。

社会の課題解決に広く活用!ゲームが持つ無限の可能性

まずは藤本さんが、ゲームそのものを学習などに利用する「シリアスゲーム」と、ゲーム的な要素を社会の仕組みに応用する「ゲーミフィケーション」の事例を解説。ゲームが学習への入口になりうることや、ゲームを介することで、空間認識能力やコンテンツの理解力を高め、チームプレイによる協調性を向上させる効果があることから、現実の物事をより深く、楽しみながら学べる可能性があることが語られました。

社会の課題解決に広く活用!ゲームが持つ無限の可能性

ディスカッションは様々なテーマを横断し、ゲームは疑似的に物事を体験できる=共感力を深められるツールであることや、ゲーム開発会社と教育の専門家が手を取り合ってつくる教材の事例、カリキュラム全体をゲームとしてデザインする海外の学校の事例、さらにはゲームを活用した福祉の事例まで、様々なゲームと社会とのかかわり方が紹介されました。

社会の課題解決に広く活用!ゲームが持つ無限の可能性
社会の課題解決に広く活用!ゲームが持つ無限の可能性

そうした議論を経て、ゲームには「競争型のコンテンツ」という側面があるため、課題に対する達成感を上手く使えば、学力の向上からリハビリまで、様々な用途に活用できる可能性があることが示唆されました。

さらに、第一部で語られた「他人と競争するだけではない」という日本ならではの特徴が持つ可能性についても、ディスカッションが盛り上がります。
たとえば『大富豪』など「トランプゲームのローカルルールが異常に多い」という日本独自の特徴なども挙げながら、ルールの中で工夫を加えることが得意な日本の強みが、ゲームを通じて社会に還元される可能性についても提案がなされました。

様々な物事を疑似体験できるというゲームの特徴は、これまでコストが高くて実現できなかった体験型の教育を広く普及させることなどを筆頭に、社会の様々な場所に活用できる可能性があります。「ゲームが社会を解決する――Game as Solutions」は、そうした可能性を、様々な角度から、多角的に提案、議論していくシンポジウムとなりました。

日本を含む世界の市場が拡大を続けているゲームだからこそ、その強みや特徴は、ますます社会的に取り入れられ、活用されていくのではないでしょうか。

社会の課題解決に広く活用!ゲームが持つ無限の可能性

【取材後記】
シンポジウムの最大のテーマは、ゲームには「アソビ」だけではなく、学問として「学び」、社会の課題を「解決する」機能があるということ。エンターテインメントとして生まれたものであるからこそ、その要素を活かすことで、様々な課題をより楽しく、面白く解決できる可能性があるはずです。そんなゲームの可能性を、改めて実感することができました!

取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。