【プロフェッショナルインタビュー「アソビト」】宇田川南欧さんをつくる“3つの〇〇”

各分野のプロフェッショナルが活躍し、支えるバンダイナムコエンターテインメント。そんなプロたちの神髄を、“3つの要素”から探ります。第2回は、主幹事業の事業戦略を担う宇田川南欧常務取締役。多忙な中で仕事に集中するためのアイテム、意欲に繋がるファン心などを語っていただきます。

自らの体験がインプットされ、アウトプットへと繋がっていく…宇田川さんの姿勢につながる3つのアイテムとは?

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人々の心を躍らせ、日々の活力となるエンタメを作りだす人たちは、自らがわくわくと楽しむことを知っているからこそ、そんな想いを提供できるということを宇田川南欧常務取締役の言葉は感じさせます。

1:野球。「好きな気持ちは活力」 

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1994年にバンダイに入社。3年目にネットコンテンツを立ち上げるプロジェクトに異動。当時はまだインターネットも普及しておらず、知識、経験ともにゼロから作り上げ、以降デジタル分野の事業開拓に携わる。2015年春にバンダイナムコエンターテインメント初の女性取締役に就任。
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今シーズンの応援用オレンジタオルと、ジャイアンツ公式ファンクラブの会員証。

――アソビトの連載、第二回目は「宇田川南欧さんをつくる“3つの〇〇”」という形で、「野球」「アロマ」「パックマンゴースト」という3つのアイテムを挙げていただきました。
まず挙げていただいたのが「読売ジャイアンツ」というキーワードです。

宇田川:そうですね。今回、持ってきたのは中学生の頃のファンクラブの会員証です。父がジャイアンツファンだったこともあって幼い頃からずっとジャイアンツファンだったんですが、中高生のときが熱狂度としてはピークではあったんです。入社後、社会人として毎日が忙しすぎて野球観戦に行ったりすることができませんでした。でも30代になって野球好きな人が社内にも社外にも増えてきて。一緒に見に行く機会が増えたので、またジャイアンツ愛が再燃している感じです。

――今シーズンは非常に調子のいい読売ジャイアンツですが、ご自身にとって「ジャイアンツ」とは、どういう存在なのでしょうか。

宇田川:もう、ただただファンなんです。だからこそ日々、楽しみになるんですね。試合結果によっては毎日一喜一憂してもいるので、心の内はアップダウンが激しいんですが、それでも同じものを応援している仲間たちが増えていったりもして、互いに熱く話が出来るのがいいですよね。社内はもちろん、社外でも、野球をきっかけに様々な業界の人ともお話が出来たりもしますし、それに野球の話をしていると、人間関係としても距離が近くなる気がしますね。

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――現地観戦というと、応援の楽しさや球場内で同行する仲間と騒ぐなど、やはり色々と醍醐味はあるかと思います。宇田川さんの球場観戦での楽しみ方を教えてください。

宇田川:楽しいのは楽しいのですが、あまりにも好きすぎて負けると機嫌が悪くなるんですよ。だからあまりみんな、一緒に行きたがらないかもしれないですね(笑)。地方遠征にも行ったりしますし、なんだったらキャンプも見に行ったりもしていて。若い頃だと地方遠征なんて費用や時間の工面で行けなかったですが、今は忙しい中でも時間を見つけては出かけます。地方遠征では試合観戦はもちろん楽しいんですが、美味しいごはんを食べたり、その地方を見てまわったりするのも楽しいです。先月は札幌に観戦に行きましたが、本当にごはんが美味しいので夜だけで6食くらい食べちゃいました(笑)。野球を見に行く、地方に行く、と思うとそれまでに仕事がすごくはかどりますし、好きな気持ちは活力になると思います。

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――応援することはもちろんですが、野球の試合に於いてはよく「見せ場」とも言います。やはりどこかエンターテインメント的な部分もあるかとも思うのですが、プロ野球観戦から得る“エンターテインメント”のヒントもありそうですね。

宇田川:ジャイアンツは心底好きなもので、何かのツールにしたいとは考えていないんですけど、野球を見に行くと各球団、色々なことを発信してファンを獲得してきていることがわかるんです。本当に盛り上がっているんですよね。勉強になることも多く、『こういう楽しませ方があるんだな』ということを知る機会にもなっています。

2:アロマ「時間を区切った中の“集中するため”の香り」

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――続いては「アロマ」についてご紹介くださるということで、アロマオイル数点とアロマポットをお持ちいただいたのですが、こちらはデスクにいつも置かれているんですか?

宇田川:今では会議が多くて、あまり自席に座ることも少ないのですが、デスクで仕事が出来るときには、アロマポットのタイマー機能を使って、そこにアロマオイルを入れて、タイマーが切れるまでの時間を集中して作業しますね。短時間ではなくて、この時間はこの席にいてこれをやろう、というタイミングで特に使っているものです。

――集中するための時間をしっかり区切るのは大切だ、とよく聞きますね。

宇田川:集中して仕事するためにアロマオイルやアロマポットを準備するのですが、その準備をしている間はひと息つけるんです。本当に数秒ではあるんですけど。流れのままに仕事に入ってしまうよりも、時間を切り換えるためにもこの方法はいいなぁ、と思っています。

――オンオフの切り替えではないですが、香りがご自身の傍にある時間はデスクでの仕事モードに切り替わる、ということですね。特に集中の高まる香りはありますか?

宇田川:ティーツリー(フトモモ科の植物)という香りが好きです。その効果が集中に関係しているかはわからないんですが、私にはすごくいいんです。時間を区切った中の“集中するため”の香り、という感じです。自宅ではこの会社用のポットよりも大きな、大容量のものを使っていて、ゆったりとリラックスして楽しむために、香りを変えてアロマを焚いています。

――時間を区切っている、という環境もあると思いますが、集中する時間を作ることで、じっくり考えたり、頭の中を整理したりできそうですね。

宇田川:忙しいとそれすら出来ないときもたまにあるんです。それはまずいな、と思っていて。席に座って、自分が伝えようとする話をまとめる時間は欲しいなって思っているので、アロマポットをつけてそういったことを考える時間はすごく貴重です。

3:パックマンゴースト。「パックマンゴーストを広めるのは使命です(笑)」

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――バンダイナムコといったらこのキャラクターですよね。やはり「パックマン」がお好きなんですね。

宇田川:パックマンもですが、その中でもパックマンゴーストです。私が好きなのはパックマンゴーストなんです。逃げてて、やられちゃう方です。

――失礼しました(笑)。そこは大事なポイントですね。なぜことさらにパックマンゴーストがお好きなのでしょうか。

宇田川:フォルムが好きなんです。私、特定のキャラクターに執着するようなことはあまりないんですが、とにかくパックマンゴーストはフォルムとしてかわいいと思っているんです。今回持ってきた私物は結構、色んなところに連れていってるんです。カバンもポーチも。海外で持っているとお店の人などいろんな方々に「それはなんだ!」「なんてかわいいんだ!」などよく声をかけられて。そういうときはうれしいですね。
私としては、もっとパックマンゴーストのグッズを社員に作ってもらいたいです(笑)。

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――今回お持ちいただいたのは、アニヤ・ハインドマーチ(故・ダイアナ妃も好んだといわれるイギリスの老舗ブランド)とのコラボのバッグにCOACHとのコラボのポーチと、中にラムネの入ったタブレット缶。日本に限らず、世界での人気を感じさせますし、なおかつ一流ブランドとのコラボということで注目度の高さがうかがえます。

宇田川:そうなんですよ。パックマンは世界的に人気のコンテンツなんです。ちなみにCOACHのポーチは3色あって、迷った挙句に赤と青を買っちゃいました(笑)。とにかく商品にしたときのかわいさとインパクトはすごくあるんですよね。
今は個人的に広めているだけなんですが、いつか会社をあげてムーブメントにしたいです。

――個人的にも広めていらっしゃるというパックマンゴースト。さらにおっしゃるような、会社をあげてのムーブメントにしていくためにも、今後、どのように広めていきたいですか?

宇田川:ゲームは主に男性に人気が高いんですけど、モチーフとしてかわいいということをもっと知ってもらって、いろんな世代に届けたいです。パックマンゴーストを広めること、このかわいさを伝えていくことが私の使命だと思っています。

――ゲームからだけでなく、ちがった観点から楽しんでもらうことで、新しい接点が生まれて世代、性別問わず広がっていきそうですね。

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アンテナを広げ、多くの興味を持つ。それが後のアウトプットにつながる

――そんな宇田川さんがお仕事で大切にしていることを教えてください。

宇田川:お客様です。お客様が望まれる以上のことをしたいと思っていますし、そのためには社員が楽しく働かなきゃとも思っているので、それを両立させたいと思っています。やはり私たちはメーカーで、商品を作って皆さんに届けているので、どういう中身にするか、どんな風にしたなら嬉しいと思ってもらえるか。それは常に考えています。

それと、今は事業変化のときなので、その中でみんなが何に集中したらいいか、どうしたら数年後に結果が返って来るかを考えています。作りはじめてから世の中に出るまでに少なくとも2、3年かかるようになってきました。そのときを見越して、どうしていくかを考えるのが私の仕事なんですが、その根底にあるのはお客様。手にした人たちが「これ面白いな」と思ってくれるものを作るために、仕事をしていますし、大切にしています。

――この会社の魅力を教えてください。

宇田川:こんな風に世の中を面白く、楽しくできるお仕事。しかも自分たちが売り出したものがそこに直結しているということを実感することはなかなか難しいと思うんですが、それが出来ることですね。

それと関われる範囲が広いと思うんですよね。プロデュース、マーケティング、プロモーション、セールスなどに携わっている社員が世に出る商品の全体像がわかって業務にあたっています。一部ではなく全体に関わっているという主体性は、責任もありますが、やりがいがあると思っています。しかも今って市場が広がっている。日本だけではないんですね。ワールドワイドに、商品をどう届けていくかを考えられるので、すごくチャレンジのし甲斐があるんじゃないかなと思います。ただ、忙しいとは思いますけど(笑)。

――昨今はゲーム、アニメを含めて、エンタメ業界が非常に元気な印象ですが、これからエンタメ業界を目指す人たちへ向けて「これが必要」というものがあれば教えていただきたいです。

宇田川:アンテナかなと思います。好きなものが多い方が絶対に広がるんですよ。限定するよりも多くの興味を持つと友だちも増えますし、色んな話に繋がっていくと思うし。固執をせず色んなものに目を向けて、多様なことに興味を持って欲しいです。社員には「インプット」を増やして欲しい、ということで「バンナムフライデー」というのを作っているんです。月に1度、金曜日をメインに、自分のインプットのためにエンターテインメントを楽しんで欲しい、と外に出ていくようにしているんです。そこでみんな舞台を見たり、映画を見たり、イベントに行ったり、自ら色々なことを体験して、それがその後のアウトプットに繋がるんじゃないかなって思っているんです。インプットが少ないと出せないと思うんです。増やした上で自分の強みを作っていくのがいいと思います。

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【取材後記】
パックマンゴーストについて語って下さるときの宇田川さんは目をきらきらと輝かせていらして、こういった純粋な想いが世の中へ「こんなに素敵なものがあるんだ」と届いていくのだろうな、と感じました。やはり「好き」という想いはエンタメには大切なファクターですね。

取材・文/ えびさわなち
リスアニ!、リスウフ♪を中心にアニメ、ゲーム、特撮、2.5次元の雑誌やWEBで執筆中のエンタメライター。息子の学校が休校になってしまい、勉強など、どのようにしようか迷っていたら、東大生の有志による動画配信授業や、ほかにも理科の実験を見せてくれる化学者のみなさんなどの登場で楽しく勉強できました。学びもまたエンターテインメントになっているのですね。

撮影/島田香