僕らのクロノアが帰ってきた!当時の世界観を残したまま遊びやすさをプラスした『風のクロノア 1&2アンコール』の舞台裏を制作陣が語る

1997年に発売され、プレイステーション時代の名作として今なお根強い人気タイトルの『風のクロノア』シリーズが25周年を迎えました。この記念すべき節目に、クロノア 1&2がリマスターされて帰ってきました。本記事では発売を記念して制作陣にインタビューを行いました。

まだ初代プレイステーションが現役だった25年前、小中学生は夢中になって遊んだものでした。数々のすばらしい名作のなかで、今なお記憶に残る1本に『風のクロノア』を挙げる人も多いのではないでしょうか。

シリーズの第1作『風のクロノア door to phantomile』は1997年に発売されたプレイステーションゲーム用ソフトです。かわいいキャラクターや気持ちよいアクション、秀逸な音楽、意外なストーリー展開などが評価され、2001年にはナンバリングタイトルの『風のクロノア2 〜世界が望んだ忘れもの〜』がプレイステーション2でリリース。グラフィックやアクションが正統進化し、プレイヤーの皆さまから高い評価を得ました。その後、2008年にはWiiで第1作目がリマスターされました。

そして第一作目の発売から25周年を迎える2022年。ついに、風のクロノアがリマスターされて帰ってきました。今回は、2022年7月7日に発売された『風のクロノア 1&2アンコール』のプロデューサー石田僚さんとマーケティング担当の池内萌さんに、開発の舞台裏について伺いました。

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石田 僚

バンダイナムコエンターテインメント所属

『風のクロノア 1&2アンコール』プロデューサー。入社後は家庭用ゲームのアシスタントプロデューサーを経て本作を担当。

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池内 萌

バンダイナムコエンターテインメント所属

『風のクロノア 1&2アンコール』マーケティング担当。入社後は、家庭用ゲームのアシスタントプロデューサーやプロモーションを担当。

世界観やストーリーは25年前のまま、グラフィックは現代にあわせ進化したリマスター版

――はじめに、リマスターの内容を教えてください。

石田:今回発売する『風のクロノア 1&2アンコール』は、Wii版の『風のクロノア door to phantomile』と、PS2版の『風のクロノア2 〜世界が望んだ忘れもの〜』をリマスターしたものです。当時のストーリーやボイス、音楽はそのままに、グラフィックやモデリングを作り直し、美麗なグラフィックで当時を思い出しながら遊べる作品に仕上げました。

『風のクロノア 1&2アンコール』プロデューサー 石田さん

――『風のクロノア』の第1作は発売当時に遊んでいましたが、トレーラーを見ると過去作と比べて解像度が格段に上がっていて驚きました! クロノアと一緒に、より美しくなったステージを冒険できることがうれしいですね。

石田:グラフィックはリマスターの主軸となる要素なので、モデリングや解像度の向上など、力を入れて取り組みました。例えば、『door to phantomile』の画面比率は当時のテレビのサイズに合わせて4:3でしたが、現行のハードに合わせて16:9に作り替えています。リマスターは原作と同じ内容で新規のゲームを作り直すようなものなので、やることはとても多かったですね。

ほかにも、ユーザビリティを高めるためにステージ内にヒントを加えたり、当時のグラフィックを再現できる「ドット風フィルター」を実装したり、Wii版で好評だった「衣装の着せ替え機能」や「タイムアタック機能」など、さまざまな要素を盛り込みました。

リマスター版では「ドット風フィルター」を選択すると、レトロな雰囲気でゲームが楽しめます!

――盛りだくさんの内容ですね! 『風のクロノア』シリーズは、音楽にも定評がある作品ですが、音声の部分でこだわった点はありますか?

石田:音楽とムービーボイスは全編を通して、基本的にリマスター元(『door to phantomile』はWii版、『世界が望んだ忘れもの』はPS2版)の音源を使用しています。一方、『door to phantomile』のプレイシーンのボイスはPS版のものも使用しました。『風のクロノア』シリーズは根強いファンの方々に支えられている作品だと思いますので、Wii版とPS版それぞれのファンの方々の声を反映するためにこのような対応といたしました。

池内:さらに、音楽をじっくり聞いてもらうために、DLC(ダウンロードコンテンツ)やデジタルデラックス版には、『風のクロノア 1&2アンコール』の音楽をすべて収録したデジタルサウンドトラックを用意しました。

『風のクロノア 1&2アンコール』マーケティング担当 池内さん

――サウンドトラックは当時も発売されていましたが、今では手に入りにくくなっているのでうれしい要素ですね。ちなみに何曲収録されているのでしょうか?

石田:収録曲は143曲です。

――143曲ですか!?

池内:デジタル版で容量の制限がないため、可能な限り楽曲を詰め込みました!テーマ曲やボス戦のテーマをはじめ、タイトルコールの音楽も収録しています。風のクロノアは楽曲も愛されている作品ですので、楽しんでいただけたら嬉しいです。

石田:このサウンドトラックのほかに、DLCデジタルデラックス版 には、開発時の設定資料や最新ビジュアルを収録した「デジタルアートブック」も封入しています。こちらは当時の開発スタッフから資料を取り寄せて編集しました。

――緻密に描かれた原色のステージ資料やラフ画がじっくり見られるのはうれしいですね! 今は印刷された冊子のアートブックを見せてもらっていますが、こちらは非売品なのでしょうか?

石田:「実際に手元にとってコレクションしておきたい」という要望もあるかと思い、アナログ冊子はアソビストア特装版に封入しています。特装版ではゲーム本編やアートブックのほかに、先述したサウンドトラック、ステッカーセット、オリジナルグラスセットなども同梱しました。

アソビストア特装版に封入されているステッカーセット(左)とアートブック(右)

――これは、欲しくなってしまう……。もしかして、アートブックの表紙は『風のクロノア door to phantomile』のエンディングで映る本をイメージされていますか?

石田:そのとおりです! エンディングをイメージして作成しました。 よく気づかれましたね。

池内:物語の顛末はネタバレになってしまうので、それ以上はストップでお願いします(笑)。

当時の感覚も大切に、時代を越えた魅力を伝えたい

――制作陣のお二人の『風のクロノア』との出会いはどのようなものだったのでしょうか。

池内:実は初めて買ってもらったゲームが「風のクロノア door to phantomile」なんです。体験版を遊んでクロノアが好きになり、母親にねだって買ってもらってからは何度も周回していました。当時は攻略本の巻末に「再生の歌」の楽譜が載っていたので、「ドレミファ」とカタカナをふって、リコーダーで演奏していましたね。

池内:思い出のあるタイトルなので、担当に決まった時はとてもうれしかったです。だからこそ、ファンの皆様にクロノアを楽しんで今後も好きでいていただけるように、何ができるのかをずっと考えてきたんです。

――25年前に発売された作品ですが、いまだにSNSや投稿サイトにイラストや動画が投稿されていますよね。これだけ反響があるのは、作品が人々の思い出に残っている証拠だと思います。

石田:自分はリアルでは触れられなかったのですが、キャラクターやストーリー、音楽に触れていくなかで、現代でも色褪せない作品だと思いました。プロジェクトが始まってからは、池内含めた社内の熱烈なファンと魅力を語り合っているうちに、作品世界にどんどんハマっていきました。

池内:リマスターが決まってから改めて遊んでみると、これだけゲームが進化した現代でも変わらずに楽しくって。当時遊んでいた方には昔を思い出しながら遊んでいただきたいですし、遊んだことのない方が初めて遊んでも楽しんでいただけると思っています。それはもちろん、大人だけでなく、令和の子どもたちも感動できる作品だと思っていますので、親子2世代で楽しんでいただけたらとてもうれしいです!

ずっと支えてくれていたファンの思いが集まった「ファンコンテンツコンテスト」

――ここからは話題を変えて、キャンペーンで行われた「ファンコンテンツコンテスト 」について聞かせてください。イラストや写真、ぬいぐるみや動画など、ジャンルを問わず作品を募集したコンテストでしたが、こちらはどういった経緯で開催されたのでしょうか?

池内:コンテストは『風のクロノア』の25周年を記念して、リマスター版発売前にファンの皆さまと一緒に盛り上がれるイベントができればと考えて開催しました。25名の入賞者にはキャラデザインを担当された荒井佳彦さん書き下ろしの額装アートと、特製ピンバッチをプレゼントしました。

 
プレゼントで贈られた額装アート

――コンテストにはどのような作品が集まったのでしょうか?

池内:ファンの皆さまの自己表現はさまざまですから、今回はあえてイラストだけに絞らずに募集して、多彩な作品をご応募いただきました。その結果、イラストはもちろん、刺繍・アクリルアート・音楽・お料理・ピクセルアート・動画など幅広いジャンルの作品をご投稿いただきました。

ファンコンテンツコンテスト 特別賞の25作品はこちら

――応募作品のなかには、思い出を文章につづった作品もありましたよね。

石田:発売当時、叔父さんとクロノアを遊んだ思い出をつづったテキストですよね! 私たち制作チームも、読んでいて胸が熱くなるものでした。そのほかにも、デコレーションケーキでクロノアの世界観を表現されたり、フルートで曲を演奏してくださったり。

池内:とにかく、どれもすばらしく25個の入賞枠に選びきれない作品ばかりで。今回応募してくださった皆さまには本当に感謝しています。

――コンテストの様子を聞いて、本当に多くのファンの皆さまに愛されている作品だと感じました。リマスターを経て、今後の展開にも期待が集まっていると思います。お答えいただける範囲で、これからの施策や展開を教えてください。

池内:今後は、ファンの皆さまに喜んでいただける取り組みを続々と企画しています。例えば、グッズはSNSで告知した「ねんどろいど」のフィギュアや、パーカー、iPhoneケースなど、数多くのコラボを進めています。今後も告知できるものからお知らせしていきますので、楽しみにしていてください!

――最後に、『風のクロノア』シリーズを応援してくださっている方々へメッセージをお願いします。

池内:ファンの皆さまには大変お待たせしてしまいましたが、それでも「クロノアが好き」と言ってくださる人が世の中にたくさんいらっしゃって、とてもありがたいことだと思っています。風のクロノア 1&2アンコールの発売をきっかけに、シリーズを好きでいてくださった皆さまはもちろん、今回のアンコールで初めてプレイする方にも「風のクロノア」の世界を楽しんで頂けたらうれしいです。

石田:『風のクロノア 1&2アンコール』は今の時代でも遊びやすいように要素を加え、原作をリスペクトしながら世界観を楽しんでもらえるように最大限努力しました。子どものころに遊ばれていた方はもちろん、今回初めて遊ぶ方にもクロノアの世界を楽しんでいただける作品になっていると思います。25周年の節目にクロノアとその仲間たちが帰ってきました。彼らと一緒にまた冒険を楽しんでください!

https://www.youtube.com/watch?v=RouJBRyZA1Q

【編集後記】
1997年に発売され、25周年を迎えた『風のクロノア』シリーズ。2022年7月7日に発売されたリマスター版の『風のクロノア 1&2アンコール』の舞台裏を制作陣に語っていただきました! 豪華なサウンドトラックやドット風フィルターなどの制作陣による粋な計らい、根強いファンがいるタイトルだからこその細部へのこだわりが垣間見えました。これまでずっと応援してくださった方も、今作が初めての方も、クロノアの世界観に浸ってみてはいかがでしょうか?

取材・文/鈴木 雅矩
1986年生まれのライター。ファミコン時代からゲームを遊び、今も毎日欠かさずコントローラーを握っている。

風のクロノア™ 1&2アンコール & ©Bandai Namco Entertainment Inc.