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『アイドルマスター』シリーズライセンスビジネス担当者はもはや芸能マネージャーだった!?企業コラボ、観光大使就任の舞台裏

長年に渡って愛され続ける『アイドルマスター』シリーズにおいて、さまざまなグッズ展開や施策などを担当するライセンスビジネスは、どのような役目を担っているのでしょうか?『アイドルマスター』と『アイドルマスター ミリオンライブ!』のライセンスビジネス担当者に、その裏側を聞きました!

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中川 康祐

バンダイナムコエンターテインメント所属

『アイドルマスター』シリーズの企画商品係や国内主要IP系、新規ビジネス系の企画営業係を統括。

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岩波 明日香

バンダイナムコエンターテインメント所属

ライセンスプロダクション ライセンスプロデュース課。『アイドルマスター ミリオンライブ!』のライセンス窓口としてプロダクションとの打ち合わせや方針決め、商品化などライセンスにおける、企画・営業・監修を担当。

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本間 凌太

バンダイナムコエンターテインメント所属

ライセンスプロダクション ライセンスプロデュース課。『アイドルマスター』のライセンス窓口としてプロダクションとの打ち合わせや方針決め、商品化などライセンスにおける、企画・営業・監修を担当。

「キャラクターではなく、ひとりのアイドル」。アイマスならではのライセンスビジネス

――『アイドルマスター』はゲームやライブを筆頭にさまざまな展開がされているIP(※1)ですが、このIPにおけるライセンスプロダクションの立ち位置はどういったものなのでしょうか?

中川:バンダイナムコエンターテインメントが取り扱うIPの多くはゲーム起点のものになりますが、そのなかでも、ありがたいことに『アイドルマスター』シリーズは国内のライセンシーさまからお声がけいただく機会が多く、ライセンスプロダクションのなかでも特に注力するIPという位置づけです。ゲームやライブとはまた違った切り口で『アイドルマスター』シリーズの魅力をお届けすべく、私たちは「Fan Fun First」(「Fan」と「Fun」を優先する)というミッションを掲げて日々仕事をしていますが、私たちの部署にとっての「Fan」はお客さまやライセンシーさまなので、そういった皆さんに喜んでいただき、期待を超えていきたいと考えています。

※1 IP:知的財産のこと。ここでは原作・キャラクターを指す。

――特に『アイドルマスター』シリーズのライセンスビジネスで大切にしていることはありますか?

岩波:『アイドルマスター』はアイドルをプロデュースするというのがテーマのIPです。私たちが外部のライセンシーさまたちと関わって商品やキャンペーン企画をする時も、「彼女たちを本物のアイドルと捉えてビジネスをしている」というのは大きな特徴だと思います。

本間:彼女たちはキャラクターではなく、実際にさまざまな活動をしているアイドルでありタレントだということですね。

岩波:今の『アイドルマスター』シリーズにはたくさんのアイドルの子たちがいるので、「この仕事だったらこの子の個性や好きなものと合うよね」ということを、それぞれのアイドルに対して考えています。

――ライセンスプロダクションというより、芸能プロダクションの方々とお話しているような気がしてきました。

中川:(笑)。我々としては本当に、芸能プロダクションのマネージャーのような感覚です。クライアントさまのニーズをうかがったうえで、「それならこの子はどうですか?」と提案することもありますし、「このアイドルにはこういう仕事をしてもらいたい」と営業をかけることもあります。

岩波:コラボをさせていただく際もそうですが、アイドルたちはお仕事をする時には、何か台詞をしゃべったり、コメントをしたりします。その結果、アイドルたちも喜んでくれたり、気合を入れたりしてくれるお仕事になったらいいな、と思っているんです。

本間: 『アイドルマスター』シリーズのアイドルに関しては、「この子はこんなことが得意ですよ」と先方に分かりやすく伝えるための、アイドル名鑑のようにアイドルたちのプロフィールや強みを落とし込んだ宣材資料を用意しています。

岩波:結果として別の子に仕事が決まったとしても、その時に「こういう子もいるんですね」と知っていただいたことが、後のお仕事に繋がっていく場合もあります。

さまざまな“プロデューサーさん”たちとの協力も!? 担当者が語る企画の裏側

――では、いくつか具体的な施策についてお話を聞かせてください。まずは地方創生の事例として、高槻やよいが高槻市のたかつき観光大使に就任したことについてうかがえますか?

中川:『アイドルマスター』シリーズには、それぞれの出身地などいろいろな地域に所縁のあるアイドルたちがいますので、地方創生との相性もいいと思っています。高槻やよいの観光大使就任は、もともと高槻市の観光協会さんからお話をいただいていました。

高槻市内には「やよい軒 高槻店」や弥生が丘町、弥生橋、弥生時代の遺跡がある安満遺跡公園をはじめ、「やよい」と縁のある場所が多々ありました。そうしたことから生まれたご縁ですね。

我々も地方創生にチャレンジしていこうというタイミングのなかで、改めて高槻市の観光協会さんにお声がけしたところ、先方も引き続き興味を持ってくださっていたことから実現しました。

たかつき観光大使に就任した高槻やよい

――もともとプロデューサーさんたちがはじめたものが、観光大使という公式のお仕事に繋がっていくのはなかなか珍しい事例ですね。

岩波:『アイドルマスター』シリーズはユーザーの皆さんが“プロデューサーさん”であるというコンテンツだからこそ、プロデューサーさんたちが自発的にアイドルたちのことを広めようとしてくださったり、応援してくださったりするんです。今回の高槻市との取り組みも、プロデューサーさんたちが日頃から盛り上げてくださったことから広がっていったお話です。

中川:観光大使就任のニュースは2022年1月12日に発表しまして、多くのメディアに取り上げていただき、非常に高い関心や期待を感じました。ほかにも高槻市の観光プログラムに登場したり、安満遺跡公園へのパネルの設置、グッズ販売など、さまざまなプロモーションのお手伝いをさせていただきました。

岩波:一方で、今回は、プロデューサーさんが盛り上げてくださったことに公式として取り組むこととさせていただきましたので、企画を検討するにあたり、長年プロデューサーさん達が盛り上げてくださっていた聖地や文化に、公式が乗っていくのはどうなのだろう、という心配もありました。ですが、発表に対して喜んでいただける声が多かったのはとてもホッとしました。

――『アイドルマスター』と『アズールレーン』のコラボキャンペーンはいかがでしょうか。

本間:『アイドルマスター』と『アズールレーン』では、ゲーム内での登場人物とプレイヤーの方々の関係性が違っているので、アイドルたちはプロデューサーさんではなく指揮官さんとしゃべることになります。関係性はすごく意識しましたし、台詞なども含めて、プロデューサーさんが見ても、指揮官さんが見てもおもしろいと思えるものにすることを大切にコラボさせていただきました。

また、システムの部分には特に時間を使いました。『アズールレーン』には艦船が指揮官さんとケッコンできるシステムがありますが、『アイドルマスター』のアイドルたちが指揮官さんたちとケッコンすることに違和感を覚え、こちらから「団結」システムを提案させていただきました。

――「ケッコン」ではなく「団結」するシステムに変更したのですね。この名称は楽曲『団結』を意識した部分もありますか?

本間:少し意識したところはあります(笑)。ケッコンではない形で、指揮官さんとの絆の深さを表わせるようなものとして用意させていただきました。

岩波:「ケッコン」はゲームシステムに関わる要素ですから、本来ならコラボコンテンツ側に合わせるというのは難しいと思うのですが、Yostarさんが快く受け入れてくださり、熱意をもって「団結」専用の演出も用意してくださいました。また、宣伝用に『アズールレーン』の艦船たちと『アイドルマスター』のアイドルたちが一緒に戦ったり、日常を送るアニメーションPVを用意してくださったりしたのも、コラボの世界観をお届けする意味でありがたかったです。

――Yostarさんにもプロデューサーさんがいらっしゃったんですね。

岩波:『アイドルマスター』シリーズの場合、お仕事させていただくいろいろな企業の方々のなかにも『アイドルマスター』シリーズを支えてくださっている方がいらっしゃることもあり、グッズひとつでも協力的に進められるケースが多いです。

『アイドルマスター』と『アズールレーン』のコラボキャンペーン

――「変なホテルとアイドルマスター」のコラボレーションについてはいかがでしょう?

中川:もともとライセンスビジネスとしてホテル事業に興味がありパートナーを探していたんですが、HISさんとツアーなどでご一緒させていただいたなかで、グループに「変なホテル」があることをうかがい、ご相談したのがスタートでした。

このコラボでは、部屋の内装だけではなく、ホテル一棟を丸ごと「『アイドルマスター』シリーズを楽しんでいただける空間」にしていきました。浅草地域周辺の方々にお声がけしてデジタルスタンプラリーも行いました。

「アイドルの魅力をさまざまな場所に連れ出したい」。ライセンスビジネスに込めた思いとは

――同じく地域との施策という意味で、『アイドルマスター ミリオンライブ!』の秋葉原での周年企画や、台湾のポップアップショップの裏側も気になります。

岩波:『ミリオンライブ!』では毎年周年企画として、アトレ秋葉原をはじめとした秋葉原の8カ所をジャックさせていただいていますが、これは本当にありがたく思っていまして、毎年この時期になると、秋葉原のライセンシーさまや各店舗さまがさまざまな商品を取り揃えて、展示や施策を仕込んでくださいます。この時期には特製のショッパーやグッズを持ったプロデューサーさんたちが秋葉原周辺を歩いている様子をお見かけすることも多く、ライブ以外でも皆さんがコミュニケーションをとれる場所として、これからも大事にしていきたいと思っています。

 

岩波:一方で、台湾でのポップアップショップに関しては、コロナ禍で現地でのライブやイベントを開催することが難しくなってしまったなかで、あるライセンシーさまが台湾に専用のポップアップショップを作ってくださいました。現地から写真を送っていただき、朝からプロデューサーさんたちが並んでくださっている様子を見て本当に感激しました。ヘルメットやICカードなど台湾ならではのグッズもあり、追加製造をするほどの人気アイテムもありました。

台湾でのポップアップショップ

――昨年末に開催された展示「アイドルマスターシリーズ コンセプトムービー2021『VOY@GER』メイキング展 in アキバCOギャラリー」はいかがですか?

本間:これは普段の『アイドルマスター』の展示と形式を変えて、入口を入るとまずは監督のメモが展示され、続いて楽曲が展示され、振り付けを作る様子が展示されるという形で、MVができていく過程を辿れるようにしました。そして最後のコーナーに、コンセプトムービーの完成版が流れている、という導線になっていました。制作チームやライセンシーさまと力を合わせて実施したので、たくさんの方にご来場いただき、本当に嬉しく思います。

――今回お話をうかがっていても感じますが、ライセンスビジネスは、アイドルたちの魅力をゲームの外のさまざまな場所に連れ出せるものなのかもしれませんね。

中川:そうですね。ゲームやライブ、未来研スタジオでの配信などとも連動させながら、我々の強みを活かして、多角的にプロデューサーさんに喜んでいただきたいと思っています。『アイドルマスター』シリーズが長く続いているからこそできることや、技術の進化で可能になったこともあります。そうした部分を上手くミックスさせながら展開していきたいと思っています。

本間:最終的には、『アイドルマスター』シリーズを皆さんの生活導線のなかで必ず見かけるような存在にできたらうれしいです。さまざまなライセンスビジネスを通して、『アイドルマスター』シリーズが生活のどこかにあるような状態になってくれたらいいな、と思っています。

岩波:ある意味制限がないと言いますか、アイドルの魅力をいかようにも活かせるのが、ライセンスビジネスだと思っています。外部のプロフェッショナルな方々にご協力いただいてこそ、さまざまな企画が生まれるきっかけになりますので、これからもアイドルたちの魅力を無限に広げていければうれしいです。また、ライセンスビジネスは、何よりプロデューサーさんたちの応援あってこそのものです。ですから「引き続き頼りにしています」ということもお伝えしたいです。

――ゲームをプレイしてくださるプロデューサーさんや、コラボで関わってくださる企業の方々も含めて、「これからも一緒にプロデュースしていきましょう」ということですね。

中川:そうですね。大きな目標として、我々のライセンスビジネスを通して、さまざまな方の衣食住を豊かにしていきたい、という思いがあるので、それをチームのひとりひとりが理解して、ライセンスビジネスを進めていきたいと思っています。

取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。

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