『太鼓の達人』祝20周年!現プロデューサー陣が語るシリーズの未来【前編】

太鼓の達人

『太鼓の達人』シリーズは2001年のアーケード版稼働開始以来、幅広いユーザーに親しまれてきました。20周年を迎えた本作は、これからどのように進化していくのでしょうか。家庭用ゲーム、スマートフォンアプリ、アーケードそれぞれのプロデューサー陣にインタビューしました!

『太鼓の達人』シリーズが初めて稼働したのは2001年。日本人に馴染み深い和太鼓を用いた本作はすぐさま話題になり、2002年には家庭用ゲームに進出しました。今ではスマートフォンアプリもリリースされ、マルチなプラットフォームでお楽しみいただける作品になっています。

2021年2月21日に20周年を迎えた本作は、これからどのように進化していくのでしょうか。今回は家庭用ゲーム、スマートフォンアプリ、アーケードのプロデューサー陣を招き、シリーズの振り返りや、将来に向けた構想を伺いました!

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佐藤秀俊

バンダイナムコエンターテインメント アジア事業ディビジョン第2プロダクション(『太鼓の達人』シリーズ IP戦略・統括担当)

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上田彩乃

バンダイナムコエンターテインメント アジア事業ディビジョン第2プロダクション(家庭用ゲーム『太鼓の達人』シリーズプロデューサー)

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川嶋康師

バンダイナムコエンターテインメント アジア事業ディビジョン第2プロダクション(スマートフォンアプリ『太鼓の達人』プロデューサー)

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木水克典

バンダイナムコアミューズメントプロダクトビジネスディビジョン プロデュース2部(アーケード『太鼓の達人』シリーズプロデューサー)

なぜ20周年を迎えられたのか、プロデューサー陣に聞く『太鼓の達人』が愛される理由

太鼓の達人

――まずは20周年おめでとうございます!

上田:ありがとうございます。私は2015年から家庭用ゲーム『太鼓の達人』を担当していますが、今では「親子2世代で遊んでいます」とメッセージをいただけるタイトルになりました。これもひとえにユーザーの皆さんのおかげだと思っています。

上田彩乃

――上田さんは2015年から担当されているんですね。家庭用ゲーム、スマートフォンアプリ、アーケード、それぞれのプロデューサーの皆さんは、いつごろから本作に携わっているのでしょうか? また、なぜシリーズが長く続いているのか? その理由を聞かせてください。

木水:僕は2018年から『太鼓の達人』アーケード版を担当してきました。『太鼓の達人』シリーズは遊び方がシンプルで間口が広く、リズムゲームの入門にぴったりです。一方で、極めると奥が深く、リズムゲームの1つの到達点でもある。20周年を迎えられた理由は、間口の広さと奥深さにある、と思っています。

木水克典

佐藤:私は2018年から家庭用ゲーム、2019年からシリーズIP(知的財産)の統括に関わってきました。『太鼓の達人』は、自分の好きな曲のリズムに合わせて太鼓を叩いて楽しむゲームです。その多様性とシンプルな体験が作品のベースになっているため、遊ぶ人を選ばないですし、時代やその時の企画に合わせて形を変えられる柔軟さがあります。このIP特性が長く続いた理由だと思っています。他作品や企業・自治体とのコラボも数多く実施させていただいております。

佐藤秀俊

川嶋:私は2020年からスマートフォンアプリのプロデューサーを担当しています。現在、タイトルは『太鼓の達人プラス』と『太鼓の達人 Pop Tap Beat』の2作をリリースしています。担当して感じているのは、ゲームそのものが直観的で分かりやすいこと。今年3歳の甥っ子が、遊びかたを説明しなくても(太鼓の「面」を叩く)「ドン」と(「縁」を叩く)「カツ」をちゃんと打ち分けて遊んでいて驚きました。一方で、この二つの入力でとても高難易度の曲をつくりだすこともできる。木水さんのいうようにとても懐が深いゲームだと思います。

川嶋康師

――シリーズは子どもから学生、大人、高齢の方まで幅広い層に親しまれていますよね。これだけ幅広い層に親しまれているタイトルは珍しいです。

木水:和太鼓は日本では誰でも知っている楽器です。しかし、実際に叩いたことがある人は少ない。だからこそ老若男女を問わず叩いてみたくなるのではないでしょうか。

2021年の夏に発売した公式マイバチも一部のトッププレイヤーさん向け商品と思われるかもしれませんが、お子さんの誕生日プレゼントとして購入してくれた方もいたんですよ。ご家族みんなで楽しんでもらえる作品として親しんでもらえているようで、とても印象的でした。

マルチプラットフォームがシリーズに好影響を生み出した

――今ではさまざまなプラットフォームで楽しまれているタイトルですが、プラットフォームごとにどのような特徴があるのでしょうか?

川嶋:スマートフォンアプリは「手軽さ」がウリですね。ダウンロードは無料でいつでもどこでも、スマホがあれば楽しめるので、シリーズに触れる間口を広げてくれています。

上田:家庭用ゲームの特色は「ご自宅で好きなだけ遊んでいただけること」です。ストーリーモードやミニゲームなど、リズムゲームとは異なる遊びも実装しているので、アーケードとはまた違った体験を生み出しています。

木水:アーケードは見るだけで叩きたくなる大きな太鼓を「ドン!」と叩く気持ちよさが特色です。誰かがプレイしている様子を見ても楽しいですし、初代から変わらず、『太鼓の達人』のコアに当たる要素なので、これからも大切にしていきたいです。

太鼓の達人

――お話を聞いていると、プラットフォームごとに上手に棲み分けができていますね。

佐藤:そうですね。それぞれのプラットフォームが役割を持って補完し合えています。ゲームセンターでは本格的な和太鼓演奏、家庭用ではオンライン対戦やパーティーゲームのような多様な遊び、スマートフォンはいつでもどこでも遊べる手軽な体験。どれが一番という訳では無く、お客様のライフスタイルやTPOでこれらプラットフォームを遊び分けていただいています。

水木:子育てや就職など、ライフステージの中でアミューズメント施設で遊べない時期もあります。けれども、家庭用ゲーム・スマートフォンアプリが上手くタッチポイントになってくれている。なにかしらの形でユーザーさんと接点が作れるので、時間が経っても『太鼓の達人』を忘れずにいてもらえる。ここがマルチプラットフォームでやってきた強みだと思います。

次の目標は海外展開! メイドインジャパンのリズムゲームとして独自の立ち位置をめざす

太鼓の達人

――20年の歴史を重ねてきた『太鼓の達人』シリーズですが、海外展開にも力を入れているようですね。

上田:家庭用ゲームとスマートフォンアプリは北米や欧州、アジアを中心に普及が進んでいます。2004年には北米向けにPlayStation2で『太鼓の達人 TAIKO DRUM MASTER』を発売しました。これは洋楽の定番ナンバーを収録して、海外の方にも遊びやすくしたタイトルです。PlayStation4やNintendo Switchでもワールドワイドで展開を行っているのですが、最近ではジャパニーズカルチャーの認知度が高くなって海外でも人気があるボーカロイドやアニメ楽曲などを収録するなど、海外ユーザーにも楽しんでもらえることを意識した選曲でリリースしています。

佐藤:これからどんどん海外展開していきたいと思っています。アーケード筐体は業態上なかなか展開が難しいところもあるので、まずはスマートフォンアプリをIPとゲーム体験の手軽なタッチポイントとして展開し、家庭用ゲームでファンを大きく広げ、そして満を持してアミューズメント施設に展開していきたいと考えています。まさに日本での展開とは逆の順番ですね。

――『太鼓の達人』は日本特有の和太鼓をテーマにしたゲームですが、なぜ海外でも受け入れられているのでしょうか?

佐藤:そらく、リズムに合わせてなにかを叩いて音が出る体験がプリミティブに楽しいんだと思います。川嶋さんも話していましたが、『太鼓の達人』は直感的でUIもすごく分かりやすい。未就学児も内容を理解して遊べるので、海外に展開しても誰もがすぐルールを理解できると思います。これは『太鼓の達人』の最大の強みです

――なるほど、シンプルな遊びだから、国や文化を超えて楽しんでもらえると。

佐藤:そうですね。近年では日本文化に興味を示してくれる人も増えています。グローバル時代に合わせて洋楽のヒットチャート曲を盛り込むこともありますが、『太鼓の達人』はあくまで和太鼓のゲームです。これからも日本のお祭り文化を発信していきたいですし、メイドインジャパンのリズムゲームとして日本の楽曲を収録することは大切にしていきたいです。

いずれはコミュニティ化をめざし、新たな「遊び」を提案したい

太鼓の達人

――最後に今後の構想を教えてください。

佐藤:お話した通り、アーケード・家庭用ゲーム・スマートフォンアプリとそれぞれが役割を持っていますが、プラットフォーム間の連携をさらに強め、お互い行き来しながら楽しんでもらえる遊びの繋がりを用意していきたいです。

――家庭用ゲーム・スマートフォンアプリ、アーケードが一体となり、遊びのサイクルを生み出していくのですね。

木水:はい。すでにプラットフォーム間で、同じ楽曲の譜面は同じにしていますし、プロデューサー陣も週に一度は顔を合わせてコラボやキャンペーンなどの計画を共有し、連携しています。

佐藤:それぞれの強みを活かして手を取り合っていこうと。『太鼓の達人』シリーズは、幅広い年代に楽しんでもらえるゲームですし、いずれはSNSのように公式ファンコミュニティを作って、コミュニケーションツールとして機能させたいですね。

木水:コミュニティはいずれ実現したいですね。ドンだー(※『太鼓の達人』シリーズを遊ぶユーザーの愛称)さんは着実に増えていて、アーケードで大会を予定していますし、家庭用ゲームは2020年にesports大会を開きました。ユーザーコミュニティを盛り上げるために、次のステップをめざしたいです。

川嶋:いろいろと可能性はありますよね。まだ構想段階ですが、『太鼓の達人』は音楽のメディアになれるのではと思っています。従来の音楽を知る手段はラジオやテレビ、楽曲配信のサブスクリプションなどを通して行なわれていました。『太鼓の達人』ならば遊びながら音楽に繰り返し触れることができます。スマートフォンアプリの太鼓の達人プラスであればダウンロードは無料でできるので、幅広くアプローチができて、遊びの中で音楽に触れることができる。将来的に新曲プロモーションの手法として、太鼓の達人が選ばれる未来がきたら面白いなと思っています。

――今後はさまざまな場所で『太鼓の達人』を見かけられるかもしれないですね! 最後にユーザーの皆さんに向けてメッセージをお願いします!

佐藤:代表して私からお話させてもらいます。今回集まったメンバーはシリーズに関わって歴こそ長くはありませんが、その分ユーザーの皆さまに近い、客観的な視点をもってシリーズに関わっています。皆さまの声を参考にシリーズを盛り上げていきますので、これからも『太鼓の達人』をよろしくお願いします!


20年の歴史のなかで着々と進化を遂げてきた『太鼓の達人』シリーズ。新しいプロデューサー陣を迎えて、今後も楽しい遊びを提案し続けてくれるのではないでしょうか。

続く後編でインタビューするのは開発陣! 初代アーケードから作品に関わる開発プロデューサー笹岡武仁など開発チームを招き、開発初期の裏話や譜面の舞台裏を伺いました。

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取材・文/鈴木 雅矩
1986年生まれのライター。ファミコン時代からゲームを遊び、今も毎日欠かさずコントローラーを握っている。